【】【角田裕毅F1第20戦分析】わずか十数秒で幕を閉じた決勝「恩返しできなかったことが一番つらい」
10月28日
「もし、新しいフロアが壊れて使えなくなると、ピットレーンスタートとなるので、そうならないことを願います」
メキシコシティGPの予選で、クラッシュしたマシンがどのように修復されるかを心配していた角田裕毅(RB)。
決勝日の朝、RBのリライアビリティマネージャーを務めるジョナサン・エドルズに、角田のマシンの状態を確認すると、エドルズはエスプレッソマシンのスイッチを押しながら、こう言って笑った。
「幸いなことにハンガリーのときより、ダメージは軽かったよ」
今年のハンガリーGPでも角田は予選でクラッシュしていた。あのとき、チームはモノコックの交換を決断。理由は予選後にマシンにカバーをかけた後は決勝日まではマシンに触れて作業できなくなるからだ。そこでチームは壊れたマシンにカバーをかけてルールを守りつつ、スペアのモノコックをレースマシンとして準備するという裏の手を利用して、グリッドペナルティを回避していた。
今回のメキシコGPのクラッシュによるダメージはそれよりも小さく、モノコックを変更することなく、修復作業を予選日のうちに終えることができた。
角田が心配していた、ひとつしかない新しいフロアも、「メカニックが頑張って、修復してくれた(エドルス)」おかげで、角田は日曜日のレースで予選ポジションの11番手からスタートすることとなった。
しかし、角田のレースはスタートからわずか十数秒後に幕を閉じた。
課題だったスタートは良かった。前列9番手からスタートしたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)にすぐに追いついた角田は、イン側を伺うが、右斜前方の10番手からスタートしたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)がいたため、アルボンの左側に1台分空いていたスペースへと移動した。
その直後、ターン1の進入に向けたアプローチが始まり、アルボンの右斜前方にいた8番手のピエール・ガスリー(アルヒ?ーヌ)がアルボンを牽制するようにコースの中央にマシンを寄せてきた。ガスリー、アルボン、角田が3台並ぶようにしてブレーキングに入っていた直後、角田の右リアタイヤとアルボンの左フロントタイヤが接触。アルボンに弾き飛ばされるかたちでコントロールを失った角田は、ターン1の先にあるバリアに激突して、レースを終えた。
リタイアした角田は、こう振り返る。
「スタートが良く、ターン1のエントリーでアレックスとサイド・バイ・サイドになったのですが、僕たちにはスペースなく、接触してしまいました。完全なレーシングインシデントです。もし、ターン1を接触しないで通過できていたら、多くのマシンを抜くことができていたと思うので、とても残念です」
アルボンも「スタートがうまくいかず、ターン1ではみんなが同じポジションを争っていたので、行き場がなく押しつぶされてしまった。残念だが、それがレースだ」と、レーシングインシデントだったと語った。
しかし、どんな理由があれ、角田のレースは戻ってこない。
「予選日の夜、チームが一生懸命クルマを修理してくれたので、レースではその恩返しをしたかったんですが、それができなかった。そのことが一番つらいです」
そう言って、角田はチームスタッフが待つホスピタリティハウスへ帰っていった。
(Masahiro Owari)
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