2024年F1第10戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)

【】F1スペインGP分析(1)苦しんだレッドブルのアップデートと、マクラーレン好調の背景

6月28日

 2024年F1第10戦スペインGPでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが優勝したが、速さで目を引いたのはマクラーレンのランド・ノリスの方だった。また、フェラーリはアップデートを入れながらも、精彩を欠いた。レッドブルはなぜ今回苦戦し、マクラーレンはなぜ好調だったのか。そして、フェラーリは何に苦しんでいたのか。F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが分析し、マシン細部の画像も紹介する(全2回)。

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 スペインGPでのマックス・フェルスタッペンの勝利は、控えめに言っても圧倒的とはいえないものだった。ひょっとすると2024年のベストマシンは、今やマクラーレンなのではないだろうか。

 今回の勝利は、フェルスタッペンであればこそ達成できたことだった。彼がRB20を運転していなければ、レッドブルはとても勝てなかったはずだ。スタートでランド・ノリスに幅寄せされ、草の上を走りながらも、2番手を維持。いったんは首位を奪ったジョージ・ラッセルを、鮮やかに抜き返してみせた。マックスは今回も、期待以上の走りを披露してくれた。

 一方で予選とレースで起きたことは、バルセロナの週末前に誰もが抱いていた疑問に対する答えを提供した。そう、レッドブルはシーズン初めに示した優位性を、いまだに取り戻せていない。今回彼らはT字型の開口部の形状変更や、サイドポンツーンのさらなる絞り込みなど、非常に興味深いアップデートを導入した(下の写真参照)。にもかかわらず純粋な戦闘力という点で、ライバルたちの上に立つことはできなかったのだ。

レッドブルRB20
レッドブルRB20比較写真

 確かにRB20は依然として膨大なダウンフォースを生成し、高速コーナーでは優勢だ。だがマクラーレンは低速コーナーのコーナリング性能では、今やレッドブルを凌ぐ。低速コーナーでのアンダーステアと、高速コーナーでの不安定な挙動とは、その両方を一度に解決するのは至難の業だ。しかしマクラーレンのMCL38は、それを高いレベルで両立できている。しかもRB20のように縁石を苦手とせず、コーナー立ち上がりのトラクション性能でも優っている。

 セッティング作業に関しても、レッドブルはかなり苦戦していた。フェルスタッペンはフリー走行でまず薄いリヤウイングで走行した後、高速コーナーでの安定性を向上させることを優先して、予選前によりハイダウンフォースのウイングに付け替えた。

 しかし予選本番では想定以上に気温が低下し、それがマクラーレンに有利に働いた。レッドブルが得意とする高速コーナーを、ほぼ同じ速さで走り抜くことができたのだ。確かにRB20はハイダウンフォースのリヤウイングをつけたことで、低速コーナーでのMCL38へのハンデキャップをかなり解消できていた。しかし路面グリップが向上したことで、逆に高速コーナーではマクラーレンも互角に戦えたのだ。

 レッドブルが土壇場で車体に大きな修正を施したのは、これが初めてではない。イモラでも、リヤウイングを付け替えている(ただし、変更の方向は逆だった)。確かに今回のセッティングの変更で、クルマの挙動は最適化された。しかし予選では気温低下のために優位を発揮できず、決勝レースのロングランではタイヤの劣化の大きさという弱点は、依然として解消できなかった。

「最適なペースを見つけるのに、少し苦労している」と、フェルスタッペンはレース後に語っていた。「各スティントの終わりでの、タイヤのデグラデーションがあまり良くないんだ。逆にランドはその段階で、いくつかのコーナーでは明らかに強くプッシュしていたね」

(第2回に続く)


この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)