【】【F1技術解説:レッドブルRB22】劇的な復活をもたらした空力アップデートの詳細/ステアリング問題がようやく解決
5月14日
大規模なアップデートパッケージとステアリングの問題解決により、レッドブルはRB22を一変させた。本稿では画像をもとに、マックス・フェルスタッペンのパフォーマンス回復の鍵を読み解く。
シーズン序盤に苦戦した後、ついにレッドブルはフェルスタッペンが望む特性のマシンを取り戻した。確かにマイアミではスタート直後にスピンを喫しレースを台無しにしたが、RB22は明らかに本来の競争力を取り戻している。前戦日本GP時点ではトップ勢に対して、純粋なスピードで約1秒の差があった。それがマイアミでは、ほぼその差を埋めている。しかもマクラーレンやフェラーリといった直接のライバルも、それぞれ大幅なアップデートを投入していたにもかかわらず、である。
■マイアミで大きく作り替えられたRB22

マイアミのアップデートでまず目につくのは、再設計されたフロントウイングだ。高圧域からの空気を取り込みつつ、気流の乱れを抑える仕様となった。さらにサイドプレートには、水平の小型ウイングが追加されている。新しいセパレーター(ビブ)も導入された。これはノーズ下を流れる空気を、上下に分割する役割を持つ(上写真黄色矢印参照)。
フロア上面を流れる気流と下面を流れる気流を分けることで、フロアおよびディフューザーが生み出すダウンフォースを最大化する狙いだ。この新しい形状はフロントウイングやフロアの改良と連動しており、ダウンフォース増加と同時に車体後方へ向かう気流の安定化に成功している。

サイドポンツーンの新形状も、視覚的には大きな変更点だ。日本GP仕様と比べると側面プロファイルは明確に異なり、落ち込みがより急激になっている。いわゆる「ガター(樋)効果」もより強調され、ミラーには水平支持部材が追加された(下のマイアミと日本GP比較写真参照)。

これらに加えて、エンジンカバーの改良、新型フロア、排気出口後方に配置された補助ウイング(フェラーリ型に類似)、さらにアクティブエアロ用の新しい回転式リヤウイングも導入されている(フェラーリが先鞭をつけた、いわゆる“マカレナ・ウイング”だ)。

ただしレッドブルは、このコンセプトがフェラーリのコピーや派生ではないことを強調している。これは長期的に開発されてきたものであり、基本アイデアは昨年すでにFIAへ提出されていたと主張する(フェラーリの提出の直後)。フェラーリがこのウイングを導入した際、多くのチームが驚いた。しかしミルトンキーンズの技術者たちにとっては、想定内だったという。自分たちは単にこの仕様を開幕3戦に間に合わせることができず、シルバーストンでのテストを経てマイアミで初投入されたに過ぎないというのだ。
作動方式にも違いがある。フェラーリが最大270度の回転を可能とするのに対し、レッドブルは逆方向に約160度程度に制限されているようだ。ただし狙いは同じで、揚力(ダウンフォース)を増やしつつドラッグを低減することにある(上のマイアミと日本GPの比較写真参照)。
レッドブルは次のように説明する。
「より大きな可動範囲を確保するため、機構と各要素の取り付けを見直し、その結果、中央付近の第3エレメントに微細な変更が必要となった」
目に見える変更に加え、軽量化も進められている。RB22は依然として最低重量を大きく上回っているものの、開幕時と比べれば大幅に改善されている。当初約12kgのオーバーウェイトだったが、このパッケージではそれが半分まで削減された。ヨーロッパラウンドではさらに軽量化が進み、規定最低重量768kgへの到達が目標とされている。
■思い通りに走れるようになったフェルスタッペン

この大規模アップデートにより、RB22は中団レベルのマシンから、予選でポールポジションを争える存在へと変貌した。実際、予選ではメルセデスに匹敵するパフォーマンスを見せている。
中国や日本で見られた予測不能で扱いにくいマシンは、依然として繊細ではあるものの、はるかに高いポテンシャルを持つマシンへと生まれ変わったのだ。そしてフェルスタッペンは、この新仕様に即座に適応した。事前にシルバーストンでフィルミングデー走行を行っていたことも奏功している。現在のマシンは、コーナー進入でしっかりとフロントの応答性を備えつつ、コントロール性も維持している。まさにフェルスタッペンの信頼に応えるマシンになっていると言える(対照的にアイザック・ハジャーは、かなり適応に苦労している)。

フェルスタッペンは、「以前はマシンに信頼が持てなかった」という。
「正直、ここまでは何もかもうまくいっていなかった。まるで自分が乗客のように感じていた。アンダーステアになったり、突然グリップを失ったり、パーツを変えなくてもセッションごとに挙動が変わったりしていたんだ。でも今は多くのことを理解できている」
「まだ完全に理解できたわけではないが、かなりの部分は把握できている。今のマシンははるかに一貫性があるし、自分のステアリング入力で思い通りにドライブできるようになった。これは非常に大きい」
この改善は単なるダウンフォース増加以上の意味を持つ。ただし、マイアミのセクター1のような高速コーナーでは、依然として弱点も残っている。
■ステアリングという根本問題の解決

予選後の会見でフェルスタッペンは、チームがステアリングシステムの問題を解決することに成功したと語った。
「最大の進歩はステアリングシステムにある。明らかに何かが間違っていたが、チームがついに修正してくれた。これで普通に曲がれるようになった」
「開幕前のバルセロナテスト走行の最初のラップから、問題があると訴えていた。でもずっと、原因の特定ができずにいた。ステアリングホイールのことばかり考えてしまいがちだが、空力特性をはじめ多くの要素が影響している。サスペンション全体も空力的に最適化されている。様々な要因が複雑に絡み合っているということだ」

チームは潜在的な原因を排除するため、ステアリングラックとその関連部品一式を交換した。フェルスタッペンはシルバーストンでの走行ですぐにその違いを感じ、マイアミでも同様の傾向が確認された。一方で空力性能の向上に比べると、ステアリングシステム改善の影響は小さいという。とはいえ、「運転がより快適になり、結果としてステアリングフィールも良くなった」と語っていた。
5週間のインターバルを最大限に活用し、レッドブルは構造的な弱点を修正した。野心的な空力アップデートと軽量化、そしてステアリング問題の解決が組み合わさることで、RB22は完全に生まれ変わった。
一貫性と扱いやすさを取り戻したこのマシンは、フェルスタッペンに再び自信を与え、レッドブルをトップ争いへと引き戻していると言えるだろう。
(翻訳・まとめ 柴田久仁夫)

