【決勝日レポート】
【F1日本GP決勝の要点】最大の敗者となったラッセルの不運と、アントネッリの急成長
19歳のアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が、ポール・トゥ・ウインで飾った中国GPでの涙の初優勝からわずか2週間後、鈴鹿の日本GPでふたたびポール・トゥ・ウインを飾った。
今回は涙を見せることなく、超満員のグランドスタンドに向かって、ウサイン・ボルトのポーズをする余裕を見せた。これで72ポイント獲得のアントネッリは、ジョージ・ラッセルに9ポイント差をつけて、史上最年少の選手権リーダーになった。
今回の日本GPにおける最大の敗者は、4位に終わったラッセルだろう。
ラッセルは2番グリッドからスタートで順位を大きく落としたりしたものの、序盤の18周目には首位に浮上した。しかし22周目にラッセルがタイヤ交換を終えた直後、オリバー・ベアマン(ハース)のクラッシュが発生。ラッセルにとっては、あまりにも不運。考えうる限り最悪のタイミングでのセーフティカー(SC)導入となった。
「信じられない!」、「この2戦、不運だらけだ」と、叫ぶように無線で嘆いたラッセル。メルセデスのチーム代表トト・ウォルフは「何ができるか、考えよう」と、必死にラッセルをなだめる。実際、SC中にタイヤ交換したアントネッリ、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)に先行され、ラッセルは首位から3番手に後退していた。
この順位のままチェッカーを受ければ、選手権首位の座をチームメイトに明け渡すことになる。そんな考えが、この時点のラッセルの頭によぎったかどうかは不明だ。しかし少なくとも、SC明けに勝負に出ようと考えていたことは間違いない。

だがリスタートに向けて全車が加速を開始したとき、ラッセルはシケイン立ち上がりで挙動を乱し、最終コーナー立ち上がりで逆にルイス・ハミルトン(フェラーリ)に抜かれていった。リスタートからわずか数秒で4番手に後退。さらにハミルトンを抜きあぐねる間に、シャルル・ルクレール(フェラーリ)にも抜かれてしまう。
その後は、フェラーリ勢を追う展開に。一方、首位のアントネッリはただ一人1分32秒台を刻み続け、2番手ピアストリ以下の差を10秒以上広げていく。この時点で、ラッセルの逆転優勝の目はほぼ消えた。
レース終盤、ラッセルはなんとかハミルトンをかわしたものの、ルクレールを切り崩すことはできず、今季初の表彰台圏外となる4位入賞が精一杯だった。

もしSC明けのミスがなければ、ルクレールを抜いて3位表彰台に。もしピアストリをかわして2位に上がることができていれば、選手権争いのダメージは最小限に抑えられたはずだった。
今季のF1は開幕前からメルセデスが最強と予想され、実際にほぼそのとおりの状況になっている。ただしドライバー選手権の観点では、経験も実績もはるかに勝るラッセルが、チャンピオン最有力候補のはずだった。ところが弟のような存在、F1参戦2年目のアントネッリが開幕戦オーストラリアGPで2位、そして第2戦中国GP、第3戦日本GPとポールポジションを獲得した上に連勝を果たし、選手権リーダーになってしまった。
ラッセルにしてみれば、今季はF1デビュー8年目にようやく訪れた、待ちに待ったタイトル獲得のチャンスだった。しかしアントネッリの成長曲線は予想以上に急激だった。まだ開幕3戦とはいえ、9ポイント差の2位に甘んじているとは、ラッセル本人も想定外だったのではないか。
もし、このままメルセデス1強の状況が続いた場合、ラッセル、アントネッリがバチバチと火花を散らす場面が、今季は何度も見られることだろう。
(執筆:柴田久仁夫)
