コスト10倍で生産に時間を要するF1新燃料。4チームを抱えるペトロナスは困難に直面か【F1コラム】
ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、2026年F1に導入される新燃料について考察した。
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2026年のF1に関して最も注目を集めている話題の一つが、新エンジンに使用される燃料だ。レギュレーションによれば、この燃料はCO2ニュートラルで、かつ100%持続可能でなければならない。気候変動への関心が高まる時代において、これは理にかなった解決策だと言える。
しかし、問題もある。F1チームの消費量を賄えるだけの新燃料を生産することは、コスト面でも技術面でも困難を伴うのだ。
エンジンサプライヤー各社は、自社エンジン専用の新燃料を生産する石油会社と協力して取り組んでいる。フェラーリエンジンを使用するチームにはシェルが供給し、アウディはBPと独占契約を結んでいる。アストンマーティンのワークスパートナーであるホンダはアラムコ、レッドブル・フォードはモービル、メルセデスはペトロナスと組んでいる。

2025年までのF1エンジンは、比較的安価な燃料で動いていた。一方、新たなCO2ニュートラル燃料ははるかに高価で、昨年までの約10倍の1リットルあたり300ドルに達するとの話もある。これらの費用は、パートナーやスポンサー契約の一部として処理されるだろう。それでも、新燃料は気候的には持続可能だが、経済性という点ではそうとは言い難い。
ペトロナスは、メルセデス、マクラーレン、ウイリアムズ、アルピーヌの4チームに供給する。それだけの量の新燃料を生産するのは簡単なことではないだろう。2026年に向けては、十分な時間があったため問題はなかっただろうが、2027年には非常に厳しい状況に直面するかもしれない。
メルセデスF1チーム代表トト・ウォルフは、次のレギュレーション変更の際に、メルセデスは、パワーユニットの供給先を減らすことを考えていると述べている。
燃料は、F1で大きな役割を果たす。たとえば、ネルソン・ピケがブラバムでワールドチャンピオンに輝いた1983年がそうだ。その際、大きな武器になったのは、エンジンサプライヤーであったBMWが燃料メーカーと協力し、第二次世界大戦中のドイツ空軍が使用した技術を参考にして開発したといわれる燃料だった。
今後数年で、燃料が再びワールドチャンピオンの行方を左右する可能性があるだろう。