2024.06.07
【F速プレミアム】
レッドブル一強から変化の風/スペイン人ライターのF1コラム
(c)Red Bull
2024年シーズンを圧倒的優位に進めていたマックス・フェルスタッペンとレッドブル。しかし、ライバル勢のアップデートでその優位性が揺らぎ始めた。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアが第8戦モナコGPまでのシーズンを語る。
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この数カ月間、F1ではその将来に大きな注目が集まっていた。ドライバー市場を取り巻く謎や、エイドリアン・ニューウェイのレッドブル離脱と彼の行き先がまだ不明であることなど、驚くべき変化があったのだ。それはおそらく、レッドブルが記録破りの2023年を経て優勢に立ったことの当然の結果だったのだろう。結局、オーストラリアで不運にも首位からリタイアしたことを除けば、マックス・フェルスタッペンは2024年シーズンの序盤を支配していた。バーレーンと日本ではフルポイントを獲得したし、サウジアラビアと中国ではファステストラップを逃しただけだった。そして、すべてが変わった。
マイアミでフェルスタッペンはランド・ノリスに敗れ2位となったが、これはノリスにとって待望のF1初勝利となった。2週間後、イモラで開催されたエミリア・ロマーニャGPの終盤で、ノリスは驚異的な追い上げを見せ、現世界チャンピオンからわずか0.7秒差でレースを終えた。そして、何かが実際に変化しつつあるのかもしれないという考えを裏付けるかのように、フェルスタッペンはモナコで6位に終わった。彼のマシンは明らかにフェラーリやマクラーレンと同等ではなかった。つまりレッドブルにとって楽なシーズンになるはずだったのに、彼らはヘマをしたということだろうか?
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覚えておくべき最も重要なことは、レッドブルがモナコを除くすべてのレースで依然として競争力を発揮していたことだ。フェルスタッペンがマイアミで敗れたのは事実だが、一方ではセーフティカーのタイミングが重要な役割を果たしていた。また、ノリスのレースペースには、セーフティカーがなくても勝てたかどうかという疑問が残る。現実にはマクラーレンがその状況から利益を得たということだ。また、マイアミ、イモラ、モナコは、F1の標準的なコースとはほとんど考えられていないことにも留意することが重要だ。
(c)Red Bull
言い換えれば、我々が話しているのはストリートサーキットと曲がりくねった昔ながらのレーストラックのことであり、たとえばサクヒールや鈴鹿などの滑らかな路面のより高速なコースと比較すると、どちらもより高いライドハイトが必要になる。そういう意味では、まったく異なる現実を持つ次のふたつのレースで何が起こるか見るのは非常に興味深いことだろう。モントリオールとバルセロナはクルマにほぼ正反対の要求を課すので、レッドブルがそこでよい結果を出せれば、彼らにとって状況はそれほど悪くないことの兆候となるかもしれない。
そしてレッドブルが2022年末に受けた、ほとんど忘れ去られたペナルティのこともある。その前年に予算制限を破ったためだ。700万ドル(約11億円)の罰金はそれほど重要ではなかったかもしれないが、2022年10月から12カ月にわたり、空力テストが10%削減されたことは要因となっているかもしれない。確かに小さなことだが、F1チームの運営を考えると、その期間の終わりまでにチームは2024年型マシンの開発を開始しており、開発の初期段階に影響を受けた可能性がある。
結局のところ、フェルスタッペンがいる限り、レッドブルが依然として優勢な立場を維持するだろうと私は考えている。しかし、明らかに変化していることがひとつあるとすれば、それはライバルたちの強さだ。昨年のこの時期までに、マクラーレンはいくつか入賞を果たし、フェラーリは表彰台に1回登壇した。2024年シーズンはマクラーレンとフェラーリが表彰台だけでなくそれぞれ1回優勝しており、現世界チャンピオンのアドバンテージははるかに小さくなっている。
モナコGP終了後、フェルスタッペンはフェラーリのシャルル・ルクレールに対して31ポイント差をつけているが、コンストラクターズ選手権でのレッドブルは“わずか”24ポイント差でトップにいるにすぎない。フェラーリがタイトルを争う真のチャンスがあるだろうか。最初の数レースでは、レッドブルは昨年とそれほど変わらない強さを見せていた。しかし、我々はより強力なフェラーリとより強力なマクラーレン、そして打ち負かされているように見えるレッドブルを目にしてきたのだ。
7月以降、彼らはライバルに対する優位性を保つための重要な資産だったかもしれないニューウェイの力を失うことになる。私は依然としてレッドブルが2024年の確実なチャンピオン候補だと考えているが、現実に我々はこのスポーツ史上最も長いシーズンに直面している。合計24レースというのは前例のない長さであり、特にこの傾向がフェラーリやマクラーレンに有利になれば、彼らのようなチームにとって追いつくチャンスが増えることになる。
しかし、ひとつはっきりしていることがある。ほんの数カ月前まで、我々はまた2023年と同じ展開を迎えようとしているかのように思えたが、F1の将来と現在の両方において、状況は突如としてずっと興味深いものになってきたのだ。
(c)XPB Images
グリッドのトップ集団での戦いだけが、F1における興味深い展開ではない。F1メディアの関心を引いている別の状況がある。レッドブル、フェラーリ、マクラーレン、メルセデスの“ビッグ4”のチームの後ろでは、フェルナンド・アロンソが中団で最高のドライバーとして君臨している。2度の世界タイトルを獲得し、20年を超える経験が彼を有利にしているのだ。しかし、スペイン人ドライバーのすぐ後ろには、あるRBドライバーが素晴らしいシーズンを過ごしている。角田裕毅は現在ランキング10位に位置しており、アストンマーティンとの戦いに向けチームを単独で率いている。
(c)XPB Images
角田は過去6レースのうち5レースでポイントを獲得し、さらにマイアミのスプリントレースでもポイントを獲得した。同時に、マイアミでのスプリントレースでは信じられないことに4位となったダニエル・リカルドは現在5ポイント。対する、角田はモナコGP終了時点で19ポイントを獲得している。レッドブルに所属していた時にはレースで優勝し、かつてはフェルスタッペンと同レベルだったチームメイトを、現実としてこの日本人ドライバーは圧倒しているのだ。これは必ずしも角田がレッドブルでフェルスタッペンに勝てるということを意味するわけではないが……。
今週、レッドブルがセルジオ・ペレスとの契約を2年延長すると発表した。ペレスはレースごとに苦戦しているように見えたため、角田がフェルスタッペンの隣でレースをするチャンスがあると考えていたが、レッドブルは少なくとも2026年までフェルスタッペンとペレスのコンビが継続することになる。
今後はRBがいつ角田との契約延長を決断するのか、ただ待って見守るしかできないようだ。
(Alex Garcia/Translation: AKARAG)
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