グランドスラム、体調不良、スタート失敗にクラッシュ。明暗分かれた上位勢、選手権は18点差に3チーム【トップチーム密着】
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGPは、トップチームの中で明暗が分かれた1戦となった。
『明』のチームはまず、優勝したレッドブルだ。予選ではマックス・フェルスタッペンがポールポジション(PP)を獲得。今シーズン6回目のPPは、マクラーレン勢のオスカー・ピアストリの5回、ランド・ノリスの4回を上回り、ここまでで最多だ。PPを獲得したサーキットは鈴鹿、ジェッダ、マイアミ、シルバーストン、モンツァ、バクーといずれも高速コーナーや長い全開区間があるコース。その強さは日曜日のレースでも如何なく発揮され、ポール・トゥ・ウインを飾った。
フェルスタッペンはこのレースで全周回をリードするとともに、ファステストラップも記録し、F1のグランドスラムを達成。自身通算6回目のグランドスラムはルイス・ハミルトン(フェラーリ)と並び、歴代2位となった(歴代1位は8回のジム・クラーク)。
レッドブルはフェルスタッペンのチームメイトの角田裕毅が移籍後最高位となる6位に入賞したことも、終盤戦に向けて明るい結果となった。
そのレッドブルとともにバクーで輝いたのが、メルセデスだ。ただし、それは薄氷を履むような状況だった。トト・ウォルフ代表によれば、「金曜の朝も、ジョージ自身が『やれるかわからない』というほど厳しい状況だった」と言う。リザーブドライバーのバルテリ・ボッタスが見守るなか、金曜日からステアリングを握り、万全ではない状態での2位表彰台は、ラッセルとチームにとって優勝に値するリザルトとなった。
対照的に『暗』となったのが、マクラーレンとフェラーリ。マクラーレンはチャンピオンシップリーダーのピアストリが予選とレースで単独クラッシュ。チームメイトのランド・ノリスも予選とレースでともに7位に低迷。オーストリアGPからの5連勝の勢いがまったく感じられない週末となった。
ただし、2連敗したモンツァとバクーはともにマクラーレンのマシンにとってアドバンテージが比較的大きくない高速型のコース。勢力図が変わったかどうかの判断は、この2戦とコース特性が異なる次戦シンガポールGPまで待ちたい。
フェラーリは初日ワン・ツー体制でスタートしたものの、2日目から失速。予選ではハミルトンがQ2で脱落し、Q3に進出したシャルル・ルクレールはクラッシュしてノータイムとなり、予選10番手に終わった。
レースでもストレートでほかのトップ3チームに迫ることができず、ハミルトンが8位、ルクレールが9位と、トップ4チームのなかで最も後方でフィニッシュした。
これによって、コンストラクターズ選手権2位争いが風雲急を告げている。アゼルバイジャンGP前まで2位につけていたフェラーリをメルセデスが逆転。さらに今シーズン最多となる33点を獲得した4位のレッドブルが、3位フェラーリとの差を14点まで縮めてきた。
今年のコンストラクターズ選手権2位争いの鍵を握るのは、もしかするとアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、ハミルトン、角田という今年新しくチームに加入したドライバーとなるかもしれない。