2025.10.03

高温多湿のF1シンガポールGPで、史上初の『ヒートハザード』規則が適用。冷却ベスト着用は任意


2024年F1シンガポールGP 決勝スタート
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 今週末のF1シンガポールGPは、『ヒートハザード』規則の下で開催される初のレースになる。木曜日の朝、F1レースディレクターのルイ・マルケスが発表した。

 マルケスは、シンガポールGPに向けた文書において、こう記している。

「スポーティング・レギュレーション第26.19条に基づき、公式気象サービスから、このイベント中のレースで熱指数が31.0℃を超えると予測する予報を受け取ったため、『ヒートハザード』を宣言する」

 新たに加えられたこの条項には次のように定められている。

「公式気象サービスが、スプリントセッションまたはレース中に熱指数が30.5℃を超えると予測した場合、あるいはレースディレクターの独自の裁量によって、競技開始予定時刻の24時間前までに『ヒートハザード』を宣言できる。ひとたび宣言されれば、その競技期間中は有効となり、全競技者には公式メッセージシステムを通じて通知される」

 さらにこの規則では次のように規定されている。

「ヒートハザードが宣言された場合:

a) 技術規則第14.6条に記載されたドライバー冷却システムを含む、ドライバー冷却を補助する追加装備を装着しなければならない。

b) 技術規則第4.1条および第4.7条に従い、ヒートハザードによる重量増加が適用される」

クーリングシステムを着用するオスカー・ピアストリ(マクラーレン)
2025年F1スペインGP クーリングシステムを着用するオスカー・ピアストリ(マクラーレン)

 2024年シーズン後半にFIAが提供したクーリングベストをテストしたドライバーたちは、その効果に懐疑的だった。たとえばジョージ・ラッセルは「運転がとても不快になった」と語っていた。しかし、今年のバーレーンGPで実際に着用した際には、改善を感じたと彼は述べている。

「冷却水を流した時は、確かに効果を感じた。レース序盤、体の周囲に16℃ほどの水が循環していて、50℃を超えるコクピット内ではかなり快適に感じた」

「もちろん改良の余地はある。でもチームがこれに多大な努力を注ぎ、このシステムは機能するという自信を持っていたので、試してみたかった。今のところは良好だ」

 ドライバーの快適性以外に、チームとドライバーにとって懸念されるのは、システムの重量である。重さはわずか500グラムだが、チームにとっては削減したい重量である。そのため、初年度に限り、FIAは、ドライバーがベストを着用するか否かを選択できるようにしつつ、ベストを使用しない場合には、コクピット内に同じ重量のバラストを搭載することを義務づけた。

 一方で、ドライバー冷却システムを機能させるために必要な新規則のメカニカル要素については、チームに選択の余地はなく、必ず搭載しなければならない。つまり、クーリングベストを使用するドライバーと、使用しないドライバーの間に重量差は生じないことになる。

 皮肉なことに、今週末は毎日午後に強いスコールの可能性が予測されている。それによって気温が下がる可能性があり、特にフリープラクティス、予選、決勝の時間帯には湿度も低下する見込みである。そのため、今年のシンガポールGPは過去のグランプリよりも、ドライバーにとって身体的負担が少ないかもしれない。

 いずれにせよ、規則に則ってレースディレクターは、今回のグランプリを『ヒートハザード』ルール下で行う史上初のレースと宣言した。決勝終了後、ドライバーたちがこの制度をどう評価するのか注目される。

2023年F1第18戦カタールGP レース後のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とアスカー・ピアストリ(マクラーレン)
2023年F1第18戦カタールGP レース後のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とアスカー・ピアストリ(マクラーレン)


(Text : GrandPrix.com)

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