3列目からの2位獲得を可能にしたメルセデスの戦略「すべてがかみ合い、オーバーカットが決まった瞬間は最高の気分だった」
F1アゼルバイジャンGP決勝に向けて、ポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)には、ハードタイヤでレースをスタートする余裕があった。一方、ジョージ・ラッセルとメルセデスは、後方に速さを持つマクラーレン2台とフェラーリ2台がいたため、ハードタイヤでのスタートは大きな賭けだった。しかしそれが見事に当たり、ラッセルは5番グリッドから2位表彰台を獲得した。
ラッセルの素晴らしい走りと、チームの完璧なレース遂行が相まって、ラッセルはアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、リアム・ローソン(レーシングブルズ)、カルロス・サインツ(ウイリアムズ)を打ち破って2位を獲得。メルセデスはコンストラクターズ選手権でフェラーリを抜いて2位に上がった。
テクニカルディレクターのジェームズ・アリソンは、アゼルバイジャンGPの決定的瞬間がメルセデスのピットウォールとガレージでどのように迎えられたかを説明し、「あのレースには本当にエキサイティングな時間があった」と率直に語った。
「ジョージは、オーバーカットを成立させられるかどうかギリギリのところにいた。ラップごとに見守っていたが、実際には少し遅れていたので、サインツのすぐ後ろで戻り、コース上で抜かなければならないと我々は思っていた」
ラッセルの素晴らしいインラップとメカニックたちの完璧な作業により、ピットアウトした際に、ラッセルはサインツの前に出ることができた。アリソンはその仕事を成功させたチームを最大限に称賛した。
「彼が前に出て、しかも1秒ほどリードしてコースに現れるのを見て、本当にうれしかった。あのピットストップではすべてがかみ合っていた。ガンを操作する者、ホイールを扱う者の動きが、まるで振り付けどおりのように見事に決まった」
「それだけではなかった。ジョージのインラップを見れば分かるが、彼は本当に全力で走り、特にインラップ後半で我々の予想を大きく上回るタイムを稼いでいた。すべてがああして結実し、オーバーカットが決まるのは素晴らしいことだ。見ていて最高の気分だった」
メルセデスはラッセルとアントネッリを別の戦略で戦わせた。その経緯について、アリソンは次のように説明した。
「我々はハードもミディアムもテストしていなかった。バクーで使われたC6タイヤは、ピレリが用意する中で最も柔らかいソフトコンパウンドだが、奇妙なことに、特に優れたコンパウンドではなかった。そのため、すべてのチームがこのタイヤによって大きな影響を受けることを避けようとしており、それによってミディアムやハードでは多くの経験を積めていなかった」
「そのため、我々は戦略を分けることにした。(スタートタイヤとして)キミにはミディアム、ジョージにはハードを与えた。そうしてリスクのバランスを取ったのだ。ミディアムとハードに分けるなら、通常では、グリッドで後方のドライバーにハードを与え、前方のドライバーにミディアムを与える傾向があり、我々もそうした。それがうまく機能したのだ」
「マシンのペースが十分であれば、ハードタイヤでかなり長く引っ張ることができる。その間に前のマシンがピットに入れば、フリーエアで走れる周回の恩恵を受けられる。これは後方グリッドからの方が効果的に働くことが多い」
「だが、グリッドの前方にいて、早い段階でセーフティカーが出ると、失うものがより大きい。しかもハードタイヤを履いている場合はリスクが大きすぎるのだ」