2025.09.25

サインツが移籍後初の表彰台「もちろん最後じゃない!」クルーは涙、元僚友ルクレールも祝福【F1第17戦無線レビュー(2)】


2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP カルロス・サインツ(ウイリアムズ)
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 2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP。脅威に感じていたジョージ・ラッセル(メルセデス)にポジションを奪われてしまったカルロス・サインツとウイリアムズ陣営だったが、見事3番手を守り切った。サインツは移籍後の初の表彰台で、その活躍ぶりは元チームメイトも祝福するほどだった。アゼルバイジャンGP前半を無線とともに振り返る。

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 12番グリッドからハードタイヤでスタートしたルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、レース中盤の21周目には6番手まで順位を上げていた。

ハミルトン:僕はどこでタイムロスしてる?
リカルド・アダミ:ターン7の出口だ。

 短いストレートからのブレーキングで、旧市街の低速区間に入るコーナーでのタイムロスを、担当エンジニアは指摘した。

ハミルトン:他にもあるだろう。
アダミ:あとはターン16だ。

ルイス・ハミルトン(フェラーリ)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)

 上位ではカルロス・サインツ(ウイリアムズ)が2番手をキープ。しかし背後からジョージ・ラッセル(メルセデス)が迫っていた。

22周目
サインツ:ペースはどうだ?
ガエタン・イエゴ:悪くない。ラッセルの方が速いが、まだ4秒2後ろだ。チェッカーまであと29周だ。
サインツ:当然だけど、ラッセルは手強いよ。

 首位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はすでに独走態勢だったが、こちらもラッセルを警戒しているようだった。

26周目
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):素晴しいペースだ。でも少しずつ削って行くんだ。今のペースは(1分)45秒9。ラッセルは(1分)45秒7だ。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

27周目
サインツ:ラッセルをアンダーカットのレンジに入れたくない。
イエゴ:わかっている。

 直後にサインツはピットイン。ミディアムタイヤからハードタイヤに履き替え、ラッセルの19秒後ろでコース復帰した。しかしラッセルは30周走っても、ハードタイヤのペースは衰えない。

30周目
ラッセル:このタイヤはいい感じだから、スティントを伸ばそう。
マーカス・ダドリー:ああ。そう言おうと思ってたところだ。このまま走り続けて、タイヤ寿命の差をつけよう。

 6番手スタートの角田裕毅(レッドブル)はハードを引っ張り続け、28周目には3番手まで上げていた。しかし背後にランド・ノリス(マクラーレン)がせまる。

33周目
リチャード・ウッド(→角田):ペースを上げろ。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(レッドブル)

36周目
ウィル・ジョゼフ(→ノリス):もっと近づけば、角田をアンダーカットできるぞ。

 この時点で、角田との差は2秒。

ジョゼフ(→ノリス):ボックスして、前に出るぞ。

 37周目。ノリスがピットイン。しかし右フロントタイヤの交換に手間取り、4秒1かかってしまう。

38周目
ウッド(→角田):よし、ピットインだ。

 角田陣営は2秒2でピット作業をこなし、ノリスのアンダーカットを阻止した。

ウッズ(→角田):ピット出口で接近戦だ。バッテリーはチャージされている。

 背後からリアム・ローソン(レーシングブルズ)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が立て続けに迫る。角田はわずかに2台の先に出たが、裏ストレートのDRSでローソンに抜かれた。

リアム・ローソン(レーシングブルズ)、角田裕毅(レッドブル)、ランド・ノリス(マクラーレン)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP リアム・ローソン(レーシングブルズ)、角田裕毅(レッドブル)、ランド・ノリス(マクラーレン)

 39周目。2番手ラッセルがピットに向かった。

ダドリー(→ラッセル):ピット出口でサインツの1秒後ろだ。出口で抜くんだ。白線のはみ出しに気をつけろ。

 しかし実際には、ラッセルはサインツに2秒近い差をつけてコース復帰。2番手をキープした。

ダドリー(→ラッセル):素晴らしいピットストップだった。

39周目
イエゴ:3番手になった。ラッセルはタイヤも新しいし、ペースもある。ちょっと難しそうだ。あと11周。このままで行くことになると思う。
サインツ:わかった。頼むから、少しほっといてくれ。

 40周目。ノリスがルクレールを抜いて7番手に上がった。

ウッズ(→角田):前のローソンは古いハードタイヤだ。後ろはノリスになった。

42周目
ブライアン・ボッツィ(→ルクレール):チャールズ、次のターン1でハミルトンに譲れ。ミディアムでペースが速い。

 ハミルトンにノリスを抜かせる作戦だった。しかしなかなか追いつけない。

46周目
ハミルトン:前の連中速いよね。追いつくつもりだけど。
アダミ:ああ。(トレイン先頭の)ローソンまで2秒5だ。君ならできる。

 だがペースは拮抗し、その差はほとんど縮まらない。

50周目
ルクレール:ルイスが抜けないなら、順位は戻すよね?
ボッツィ:すぐに返答する。

ボッツィ(→ルクレール):最終周のメインストレートで順位を戻す。そこまでにルイスが抜けていなければ。

 フェルスタッペンがチェッカー。2位ラッセルに14秒差をつけて、第16戦イタリアGPに続く2連勝を飾った。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

フェルスタッペン:信じられないよ。炎のようなレースだったね。

 そしてサインツが、ウイリアムズ移籍後初表彰台となる3位入賞を果たした。

サインツ:バモス!!(スペイン語でレッツゴー) 僕のキャリアで最高の表彰台だ! みんな、本当によくやってくれた。
ジェームズ・ボウルズ代表:素晴らしいレースだった。バモス!!
サインツ:ウイリアムズで初めてのスムースオペレーションだった。そしてもちろん最後じゃない!
イエゴ:そうだね……その通りだ。
サインツ:もしかして、泣いてる?
ボウルズ代表:そうなんだよ(笑)。

カルロス・サインツ(ウイリアムズ)
2025年F1第17戦アゼルバイジャンGP 3位に入賞したカルロス・サインツ(ウイリアムズ)

 喜びに沸くレッドブル、ウイリアムズ陣営の一方で、フェラーリは最終周での順位の入れ替えに失敗した。

ボッツィ:申し訳ない。
ルクレール:どうでもいいよ。9位だし。(ルイスは)8位を楽しんでくれたらいい。カルロスは、3位なの?
ボッツィ:そうだ。
ルクレール:それはよかった。素晴らしい。

 去年までのチームメイトの健闘を祝福するルクレールだった。



(Text : Kunio Shibata)

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