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佐藤万璃音が語るF1初テストの詳細「F1とF2は3つくらいカテゴリーがかけ離れている」

2020年12月23日

 12月15日にヤス・マリーナ・サーキット(アブダビ)で行われたF1若手ドライバーテスト。アルファタウリF1のマシンで127周を走った佐藤万璃音が、その具体的なテスト内容を語った。


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「FIA F2の最終2大会のためバーレーンへ飛ぶ1週間前、イギリス・ミルトンキーンズにあるレッドブルのファクトリーでシミュレータを1日だけ経験しました。アルファタウリのクルマではなく、レッドブルのクルマでしたけどね」


「朝8時半から夜6時半まで、昼食休憩などを挟みながらも合計7、8時間は走りました。これまでもシミュレータは何度も経験していますが、レッドブルのものは精度や再現性が高いだけでなく、ドライバーが得られる情報量が格段に多くて、“お金が掛かっているなあ”と感じました。シミュレータに関して、僕には守秘義務が課せられているので詳細は話せません」


「施設に立ち入れるのは許可された僕らドライバーと、シミュレータエンジニアなど限られた少人数の担当者だけです。外部とは壁で遮断されていて窓もなく第三者はその様子を見られないし、シミュレータの担当者以外はパフォーマンスエンジニアやトラックエンジニアでさえ基本的には立ち入り禁止で、現場で重要なポストに就く人間でも見る機会は限られているようです」


「アブダビのテストではピエール・ガスリーのクルマに乗りました。現場で僕を担当したエンジニアは、ガスリーのトラックエンジニアではなくパフォーマンスエンジニアでした。レースのときも彼は現場に居ますが、今回のテストではトラックエンジニアに代わって僕の担当に就きました。もともとテスト専従なのか彼に経験を積ませるためなのかチームの意図は分かりませんが、いずれにしてもそういう形でした」


「とにかくF1チームは人が多すぎて、誰が何をやっているのかよく分からない。僕の周りにいて話しかけてくる人に『あなたの担当は?』と聞くとエンジニアという答えが返ってくる。『じゃあ、あの人は何の担当なの?』と聞くとやはりエンジニアだと。みんなエンジニアだって言うんですよ(苦笑)」


「F1のレースウィークのセッション中に経験したのですが、ピット前のプラットホームで僕が無線のチャンネルをフルオープンにしたら、たくさんのエンジニアが同時に延々としゃべっていました。たとえば、いまアンダーステアが出たと誰かが言えば、僕はこう思う、私はこう思うという反応が次々に各担当エンジニアからもたらされる。それをパフォーマンスエンジニアが取りまとめて判断し、トラックエンジニアを通じてドライバーへ指示を入れるという仕組みです」


「基本的に僕らドライバーが無線で話すのはトラックエンジニアだけ。現場はもちろんファクトリーで控えているいろいろな担当エンジニアの情報をパフォーマンスエンジニアが取りまとめ、トラックエンジニアへ指示を出します。そして最終的にはトラックエンジニアからの連絡を受けて、僕らドライバーはドライビングに反映します」


「今回のテストで僕が乗ったクルマは、ガスリーがF1アブダビGP決勝で乗ったセットアップと同じではなかったようです。基本的に僕が担当したテストメニューは空力中心でショートスティントでしたが、そのときの状況に合わせて周回数に違いはありました」


「用意された新品タイヤはソフトが2セットでミディアムが5セット。このうちタイムアタックではソフトを2セット、ミディアムを1セット使いました。1セット目のソフトは僕がセクター1のミスでタイヤを傷めてしまい、2セット目のソフトは渋滞に邪魔されました。結果的に僕のベストタイムは、ミディアムの1セットで出したものでした」


「ロングランに使ったのはミディアムだけで、最長でも16周を走るに留まりました。10周以上を走ったのは3回だけで、途中で足回りや空力の軽いセットアップ変更を挟むから、傍目にはショートスティント寄りになっていました」


「チームが重視していたのは空力です。空力部品を丸ごと交換するような変更こそなかったけれど、車高は細かく変更していました。ただし、アクセル全開から全閉にして車高変化を調べる、いわゆるストレートエアロテストは禁止されていました。今回はあくまでドライバー向けのテストであり、クルマ向けのテストではないというFIAの趣旨によるものです」


「(角田)裕毅と僕とは基本的に似たようなメニューだったようです。とりあえず僕は空力中心で、足回りはさほどでもなかった。クルマはセットアップ変更にシビアに反応します。パワーユニット(PU)に関しては、エンジニアからの指示があったときだけ、僕がステアリング上のボタンやスイッチを操作します」


「ディファレンシャルの効き具合やエンジンブレーキの効き具合も、僕自身がステアリング上の操作で変更できます。コントロールプロセッシングユニット(CPU)を操作して、前後のブレーキバランスを各コーナーで最適に配分することが可能です。エンジニアからの指示では、“consider(熟慮・熟考・考察・検討)”という言葉が多用されます。こういうオプションもあるよ、と話し掛けてくるわけです。それを受けて僕が具体的な操作をします」


「まあ、FIA F2とF1の間は3つくらいカテゴリーがあってもいいくらい、いろいろとかけ離れていますね。とはいえ、エンジニアからたくさんの指示があっても操作ミスは1度もしていませんし、僕本人はそれほど苦労しなかった。意外とすぐに慣れました」


「F1ドライバーを目指すにあたり、課題はたくさん見つかりました。クルマの特性をつかんだり、コーナリングスピードに慣れたり、ブレーキングに慣れたり。でも、エンジニアとのやり取り、操作系に関してはまったく問題なかった。ボタンやスイッチはたくさんあるけれど、トラックエンジニアの指示に従えばいいので、配置さえ憶えていれば見なくても操作できます」


「今回のテストで来季に活かせることは体感スピードだと思います。余裕が生まれるでしょうね。ただ、F1のクルマとF2のクルマはその違いが大きすぎる。F1でできたからF2でもできるという話にはならない。そのくらいF1とF2はかけ離れています」


「(2020シーズンFIA F2王者の)ミック(・シューマッハー)より速かったといっても、“それが何?”という感想しかないですね。チームも違うし、チームが用意したテスト内容も同じではないでしょう。今回のテストの自己採点は難しい。ソフトで1分37秒台を出せなかったのは心残りだけれど、それ以外はチームから要求された仕事をしっかりこなせました。ホテル下の左コーナーひとつ目でスピンしたけれど、クルマは掃除するだけで済みました」


「スピンは午前のセッション開始1時間後でした。最初は体感スピードが速すぎたけれど、慣れてきたら楽しくなって攻めてみました。スピン後のピットガレージでは、アルファタウリF1代表のフランツ(・トスト)さんが目の色を変えて僕に歩み寄り、『タイムを出すのは慣れてきた午後でいいから!』と言って来たのは印象的でした」


「それはともかく、トストさんからちゃんと仕事を評価してもらえてうれしかったですね。今回のテストではGPSが使えず、ソフトでの2回目のタイムアタックで渋滞に巻き込まれたのもそれが原因で、チームから具体的な指示を与えられず申し訳なかった、と謝られました」


 佐藤は2021年シーズンもFIA F2の継続参戦を狙っている。どのチームで走ることになるかは未定ながら、F1昇格を目指す果敢なプライベーターの挑戦にはこれからも目が離せない。

佐藤万璃音(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1アブダビテスト 佐藤万璃音(アルファタウリ・ホンダ)

佐藤万璃音(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1アブダビテスト 佐藤万璃音(アルファタウリ・ホンダ)



(取材・まとめ Kojiro Ishii)




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