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「僕らには、天使の応援がついていた」とガスリーが振り返る、“奇跡”だけど“必然”だったモンツァの勝利

2020年9月24日

 誰もが、美しい表彰台だと感じた。コースを埋めるティフォシの姿はなくとも、それは寂しさよりも静謐な空気をもたらして、3人の談笑を包む光がまるで、教会のステンドグラスから降り注いでいるみたいだ。


 あふれる思いをしっかり抱きとめるために、ひとり残ったピエール・ガスリーは表彰台に腰を下ろした。


「たくさんのことが思い浮かんだ。家族、兄弟、幼馴染、僕を支え続けてくれた人たち……僕は表彰台の下にいるはずのティフォシを想像しようと努めていた。とても特別な瞬間だった」


 夢に見た初勝利は、思いがけないかたちでやってきた。2年前、レッドブルへの昇格が決まったとき、一緒にプールに飛び込んだ友達は「22年ぶりにF1でラ・マルセイエーズ(フランス国歌)が聴ける」と喜んでくれた。1年前、トロロッソへの“降格”を告げられたとき、そんな夢は潰えたように映ったかもしれない。でも、けっして見失ってはいなかった。


「このチームに戻って以来、僕は周りに目を向けることを止め、自分だけに集中し、一日一日、レースからレースへと、必ず学び進化する努力を絶やさなかった」


「自分自身のアプローチ、ドライビング、エンジニアとの仕事、マシンのセットアップ、コミュニケーション……僕が望むとおりに走れるよう、チームは全力で僕をサポートしてくれた。マシンに乗っているときも、乗っていないときにも」


 望むとおりのドライビングができれば、自分には力があると信じていた。F1に到達するまでのすべてのカテゴリーで証明してきたのだから、F1という大きな世界で、重い責任を背負っても、絶対にできる。その思いを共有するチームがあったから、孤独な作業ではなかった。


「F1で走るチャンスを僕に与えてくれたチームだ。ホンダもずっと僕を信じてくれた。去年のブラジルでは初めての表彰台を、そして今日は初めての勝利を僕に与えてくれた」


 自分がチームに“もたらした”とは言わず、何度も「チームが僕に」と表現するところに、彼の素直な心が表れていた。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1第8戦イタリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)


「今日の僕らには、天使の応援がついていた」と、波乱のレースを振り返る。19周目にタイヤ交換した直後、セーフティカーが入ったのは不運。しかしその11秒後、ピット入り口がクローズドになったことで形勢は逆転した。


 首位ルイス・ハミルトンは10秒ストップ&ゴーのペナルティを背負い、他のマシンはSCの恩恵を受けることができず、ガスリーはそのあいだに集団に追いつき、3番手で再スタートを迎えた。


 そして25周目にはシャルル・ルクレールの事故によって赤旗中断――。何よりも大切だったのは、大きなインパクトにも拘わらずルクレールが無事であったこと。彼がマシンを降りて走り去る映像によって、みんながその無事を確認できた。


 次に大切だったポイントは、中断のあいだにハードからミディアムのニューセットにタイヤ交換したことだった。3番手からスタンディングスタートでの好発進は、ダウンフォースをつけてコーナリング速度を重視したアルファタウリのマシンが勝つための、重要な鍵となった。


「僕自身は、まだ勝ちを意識する状態じゃなかった。ルイスはペナルティの後あっさり僕らを抜いていくと思っていたし、バルテリ(ボッタス)だってそうだ。チームは“そうでもない”と思っていたみたいだけど、僕はとにかく自分の周りのマシンに注意しようと考えていた」


 スタートではしっかりとメルセデスの真後ろにつき、出遅れたランス・ストロールをかわして2番手。28周目にハミルトンがペナルティピットに入ったところでトップに立った。


「タイヤを酷使すると分かっていても、後続をDRS圏外まで引き離すため、僕はコーナーで攻め続けた」


 他より4周フレッシュなタイヤで再スタートしたことが、ここでも大きな意味を持った。ガスリーとは逆に、中断の時点から勝利を強く意識していたカルロス・サインツは、アルファロメオの2台に阻まれつつ、ガスリーのDRS圏内を目指していた。


 34周目、2番手まで挽回すると、即座に「ガスリーはどこ!?」と訊ねる。ライバルは4.3秒前方――。そこから少しずつ、着実に、ガスリーとの間隔を詰めていった。サインツの追撃がもっとも勢いに乗ったのは40〜47周のことだ。


「スリップストリームの効果を得るのに、3秒は理想的な間隔だったから」と振り返るガスリーは冷静。その後1.5秒以内まで近づくと、今度はマクラーレンが乱気流に苦しむことが分かっていたのだ。ストレートではサインツが0.3秒近づき、コーナーではガスリーが間隔を取り戻す。


 2台ともがタイヤの性能低下に苦しみながら、間隔は最後の2周まで1.5秒で膠着した。「最終ラップを除いて、僕はエネルギーをセーブしていた。カルロスが何かをしかけてきたら、応戦するために」


 最終ラップのターン1では、ふたりの間隔は0.351秒。しかしチェッカーフラッグまで、位置関係が入れ替わることはなかった。最大の勝因は、ガスリーの強い心――。


 フランス人にとって、オリビエ・パニス以来24年3ヵ月18日ぶりの優勝。ファエンツァのチームにとって、セバスチャン・ベッテル以来4371日ぶりの2勝目。勝利の涙はドライバーひとりのものじゃない。語りつくせないほど、理由はたくさんある。



(Masako Imamiya)




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