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津川哲夫、川井一仁、浜島裕英の3名が選ぶF1ベストドライバー/F1速報の30年

2020年5月14日

 1990年6月の『F1速報メキシコGP』で正式に創刊スタートした『F1速報』は、30年間欠かさずレースbyレースでF1グランプリの魅力をお届けしてきた。今回は、その30年間を集大成した記念ムック『F1速報の30年』にて、本誌解説陣である津川哲夫氏、川井一仁氏、浜島裕英氏に集まっていただき、30年間のベストドライバー、ベストマシン、ベストレースについて語り合ってもらった。本記事では、そのなかからベストドライバー編をお送りしていきたい。
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──まず、ベストドライバーからおうかがいしたいのですが、その定義から教えてください。

浜島裕英(以下、浜島):僕は、お世話になったドライバーかな。


一同:(笑)。


浜島:それは冗談としても、一緒に仕事をしたドライバーじゃないと技量が分からないからね。僕の考えではまずタイヤを上手に使えること、次にモチベーションをずっと保てるかどうか。そして、最後に人柄も入ります。それでいくと、ミハエル・シューマッハーが一番ですね。


川井一仁(以下、川井):僕も1位はミハエル。彼に関しては、アイルトン・セナからすべてを吸収して、それをさらに高い次元に引き上げた人、という意味合いもある。データの読み方、戦略、タイヤの使い方、フィジカルトレーニングまで、すべての領域においてF1のスタンダードを作り上げた人物だったと思う。


津川哲夫(以下、津川):チャンピオンを何回も獲るようなドライバーは、どのチームに行っても速いはずなんです。そのなかで評価の基準となるのは、最低でも2チームでチャンピオンを獲っているかどうか、ということ。ミハエルが素晴らしいのは、ベネトンをチャンピオンチームに引き上げて、その後フェラーリの黄金時代を作り上げたからです。


 僕はミハエルとミカ・ハッキネンのライバル時代がF1にとって至極の時間だと思っているけど、それはお互いが相手をリスペクトしていて、決してぶつかることがなかったから。ハッキネンは今でもそうだけど、少年みたいだよね。圧倒的なスピードを発揮するけど、ドジを踏むと人目をはばからず泣いてしまう。あの性格が人間的ですごく好きだったので、彼をふたり目に挙げた(笑)。

ミハエル・シューマッハー
ミハエル・シューマッハー

ミカ・ハッキネン
ミカ・ハッキネン


川井:アイルトン・セナも忘れてはいけない人。1988年のモナコGPも予選では、おなじマシンに乗るアラン・プロストに対して約1.4秒という信じられない大差をつけていたけど、今の時代ではあり得ない。まさに、異次元の人でしたね。それからセナは、目と動体視力のコーディネーションがものすごく良かった。彼がラジコンをやっているところを見たことがあるけど、狭い部屋でもどこにも衝突しないし、常に全開。あれは、本当にすごかった!


浜島:セナはレーシングカートの頃からそうでしたね。本人は「コマ送りで物が見える」と言っていたけど、その言葉を信じられる領域にいた。


津川:限界への考え方が、まったく他の人とは違うんです。普通の人が考える“安全率を高くした”リミットではなく、セナは“それで終わり”というリミットまでいっていた。そのミクロの差が、あれだけぶっちぎりの差につながっていたのだと思う。

アイルトン・セナ
アイルトン・セナ

ベストドライバーとは何なのか、それは誰なのかと真剣に語り合う3名
ベストドライバーとは何なのか、それは誰なのかと真剣に語り合う3名

■現役王者のハミルトンは超一流だが、ナンバー1という評価ではない

──浜島さんは、フェラーリ在籍時代に共闘していたフェルナンド・アロンソを2位に入れていますね。

浜島:彼の運転技量はピカイチで、いろいろな引き出しを持っていたし、タイヤのこともよく分かっていた。ただ、人柄の問題がちょっとあるので、2位にしています(苦笑)。おそらく川井さんも津川さんも彼のすごさは認めているけど、裏の顔も知っているから上位には入れなかったんだと思うんです。


 すぐにしびれを切らして自分でチームをぐちゃぐちゃにした後に、飛び出してしまうから。あと1年我慢していれば、おそらくフェラーリでもチャンピオンを獲れたはずなのに、そこが彼の欠点だと思います。

──津川さんも一緒に戦った経験のあるネルソン・ピケの名前を挙げています。

津川:表向きのネルソンは渋くていじわるで、ブイブイ言わせているような感じだけど、裏側を見ると実はビビっていて、一生懸命虚勢を張っていたんだよね。たとえば、ネルソンは自分が犯した失敗やタイムが出なかったことに対して、頭を抱えてすごく悩んでいた。だけど、次にハンドルを握るときまでには、ちゃんと立ち上がってくる。そういう彼の姿をずっと見てきたから思い入れがあるし、何より昔の豪傑だよね。

フェルナンド・アロンソ
フェルナンド・アロンソ

ネルソン・ピケ
ネルソン・ピケ

──現役王者であるルイス・ハミルトンはいかがでしょうか。

川井:戦績だけを見れば、トップ3に入れなければいけない人物なのかなと。でも、彼のレースで印象に残っているものは、正直あまりないんだよね。特に、メルセデス移籍後はライバルがチームメイトしかいない状況だから。


浜島:レースにはいっぱい勝っているし、チャンピオンも6回獲っていて、運転技量も高い。フロントにあそこまで荷重をかけられるのは、才能だと思います。だけど、環境に恵まれすぎて勝っているから評価が難しい……。


津川:ハミルトンは間違いなく超一流レベル。なのに、ナンバー1という評価にはならないんだよね。彼は2チームでチャンピオンを獲っているけど、マクラーレン時代ははっきり言って“もらった”ものだから。ブラジルGPでトヨタのティモ・グロックがわざわざどいてくれたから、5位に入ってフェリペ・マッサを逆転できたわけです。そしてメルセデス時代には、ニコ・ロズベルグにもやられている。


川井:今のF1は予選こそ一発の速さを競っているけど、レースはマシンもタイヤもいたわることが求められる。それがうまいのがハミルトンなんだよね。

──そもそも強いドライバーとは?

津川:僕が思うに、“殴り合い”で負けないヤツが強いドライバー。本当のげんこつでの殴り合いではなくて、たとえ相手をコース外に飛ばしても、自分は生き残っていないといけない。昔はみんな相手をちゃんとリスペクトした殴り合いをしていた。ネルソンを挙げた最大の理由は、それが巧みだったから。


浜島:今はマシンが安全になりすぎたという側面があって、多少接触しても、怪我をすることがなくなった。


川井:マシンの安全性からくる、“怖さのなくなり”なんだよね。つまり、事故を起こす怖さがなくなったということが問題なんだ。


津川:今は相手がいることも無視して、行けるところまで行ってしまう。それで接触しても、相手が悪いと駄々をこねる。ただ、マックス・フェルスタッペンはそこがだいぶ改善されてきて、ネルソン側の方にきたと思う。でも、シャルル・ルクレールはまだダメなんだ。


川井&浜島:そう思いますね。

ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトン

マックス・フェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン

F1速報の創刊号となった『1990年メキシコGP号』を持つ津川哲夫氏(左)、川井一仁氏(中央)、浜島裕英氏(右)
F1速報の創刊号となった『1990年メキシコGP号』を持つ津川哲夫氏(左)、川井一仁氏(中央)、浜島裕英氏(右)

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 この後も3人の結論として、ベストドライバーは誰かという結論やベストマシン、ベストレースを論じていくのだが、それはまた立ち読みでもいいのでぜひ誌面でご確認を。『F1速報の30年』では、こういったスペシャル対談の他、本誌執筆陣によるF1速報から見た歴代ドライバーやシーンの再分析、本誌の成り立ちなど、“日本のファンが体験してきたF1の30年”を独自の視点から振り返った1冊となっている。



(autosport web)




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5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム40
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
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