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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第15回】PUトラブルに見舞われ入賞届かず。浮き彫りになったチャーリー不在の安全性への不安と疑問

2019年11月28日

 今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと小松礼雄チーフレースエンジニア。前戦アメリカGPでの空力テストを経て、第20戦ブラジルGPでは入賞を狙うプログラムを組むことができた。ところが決勝レースではスチュワードの無責任さにより、安全性を脅かす場面も。現場の事情を小松エンジニアがお届けします。


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2019年F1第20戦ブラジルGP
#8 ロマン・グロージャン 予選8番手/決勝13位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選10番手/決勝11位


 ブラジルGPの舞台となるインテルラゴスは、そこまでうちのクルマに合わないことはないだろうと思っていました。前戦アメリカGPでの空力テストを終えて、ブラジルではどのエアロパッケージを使うのかを決めていたので迷いはなかったです。アブダビよりもブラジルの方がクルマの特性に合っているので、ブラジルでポイントを獲れるようにプログラムを組んでいました。


 この週末、一番心配していたのが路面温度の変化です。金曜日は20〜25度くらい、日曜日は50度近くになるという予想でした。金曜日のフリー走行を走ったではクルマのバランスもよく、タイヤも上手く使えていたので、温度の上がる日曜日に向けてどういう対策をするのかということが金曜の夜の焦点でした。


 路面温度が高くなると、特の今年のクルマではリヤタイヤに厳しくなります。これまでのデータやシミュレーションから、どれだけの影響があるかを予測できるので、クルマのセットアップを見直すと共にフリー走行3回目のプログラムも日曜日に向けて変更しました。


 結果的にポイント獲得はなりませんでしたが、現場でのオペレーションとしてはこの路面温度の変化に上手く対応することができたと思っています。ファクトリースタッフのサポートもあり、一歩先を見越して作業を進めることができたのはチームとして大きな進歩だと思っています。

2019年F1第20戦ブラジルGP ケビン・マグヌッセン(ハース)
ケビン・マグヌッセン(ハース)


 決勝レースでは、セーフティカー(SC)後の再スタートまでは上手くレースを進められていました。基本は1ストップ作戦で、もしタイヤの持ちが予想より悪ければ2ストップに変更する予定でした。まずはセルジオ・ペレス(レーシングポイント)が17周目にピットインしましたが、これは2ストップにしても早すぎたので反応しませんでした。


 20周目、2ストップのタイミングでジョビナッツィがピットインしましたが、ウチはタイヤの保ちが良かったので、当初の予定どおり1ストップでいくことに決めて、これにも反応しませんでした。ライコネンも21周目にピットに入ったので、この時点でアルファロメオは2台ともに2ストップ作戦とはっきりわかりました。


 そしてロマンは1ストップが可能になる26周目まで引っぱってからピットイン。その後はタイヤを保たせながら、アルファロメオが仮にSC出動中に2度目のピットストップをしても前に出られないだけのギャップを持って走りました。予想通りアルファロメオの2台が2回目のタイヤ交換を行い、その後は彼らやペレスとも戦えると見ていました。

2019年F1第20戦ブラジルGP ロマン・グロージャン(ハース)
ロマン・グロージャン(ハース)


 54周目にバルテリ・ボッタス(メルセデス)が止まったことによりSCが出動しましたが、このリスタートの時に、実はパワーユニット(PU)のMGU-Kに問題があったんです。第11戦ドイツGPに続いて、問題が起きたのはこれで2回目。フルパワーを出せなかったのでカルロス・サインツJr.(マクラーレン)に1コーナーの進入で抜かれ、ターン2で押し出され、上手く加速出来ずにターン4までにはアルファロメオの2台にも抜かれてしまいました。


 ロマンは抜かれた後にフリーエアーで走ることができず、タイヤを上手く機能させることもできなかったのでどんどん抜かれて最後尾付近まで落ちてしまいました。


 3位に入賞したサインツJr.は、ウチと同じ戦略を採っていて、タイヤ交換のタイミングもロマンと3周しか変わらなかったことも考えると、再スタート時の問題が悔やまれます。実際、2スティント目に履いていたタイヤの磨耗をレース後にみても、最後までいけたと思うので、本当に残念でした。

■レースディレクターとスチュワードの問題が浮き彫りに。ダブルイエロー区間でのDRS使用を罰せず

 ところで今回のレースでは、残念ながらまたもレースディレクターとスチュワードの問題が発生しました。これはボッタスがターン4で止まった際、ダブルイエローが出ていた時に起こりました。


 ロマンの後ろを走っていたサインツJr.はダブルイエローの区間でDRSを使用して、ロマンとのギャップを縮めました。その後SCが出動したのですべてのクルマ間のギャップが詰まり、この時に縮めたギャップはアドバンテージにはなりませんでした。


 しかし、問題はダブルイエローという安全を第一に考えなければならない状況でDRSを使用していたという事実です。サインツJr.はダブルイエローの区間に入っても、止まっているクルマはもっと先にあるから、最初の数100メートルはDRSを使って車速を上げてもOKだと自分で判断したわけです。


 この行為に対してレース後に何のペナルティも科せられませんでした。このような行為を容認していては、これから先どんな事態になるかわかりません、ウチのチームマネージャーがスチュワードに話しにいっても埒が明かなかったので、僕が話しに行きました。結局あまり実りのある話しにはなりませんでしたが、そもそもドライバーに『ここの区間は安全かどうか』を判断させる余地を与えるべきではないんです。


 今回のスチュワードのひとりだったエマニュエル・ピロは、他のクルマも全開で走っていたし、サインツJr.がターン4のブレーキングポイントの手前100mくらいのところでリフトオフしているので問題ないと言いましたが、話の焦点はそこではありません。もちろん全開で走っているのも良くないですが、それを許容しているからと言っても、次のステップであるDRSも使っていいのかと言ったらそれは違います。


 アメリカGPの終盤にケビンがマシンを止めてイエローが出ていた時にDRSを使ったドライバーがいたので、この件はブラジルGPのドライバーズブリーフィングでも話題になりました。システム上DRSを使えないようにはしないけれど、ドライバーが自分で使わないようにするという話があったにも関わらず、サインツJr.はDRSを使い、ペナルティを受けませんでした。こんなにいい加減な話がどこにあるでしょうか。


 万が一これで事故が起きたらどうするのか……。正直なところ、チャーリー・ホワイティングが亡くなって、裁定判断の基準が崩れている状況です。彼はドライバーやチームに対してしっかりと基準を示して手綱を握っていましたし、みんなから一定のリスペクトを受けていました。


 チャーリーの裁定に疑問があって話しに行ったことも何度もあります。その場合は常にきちんとした議論ができました。同意するかしないかは別にしても、チャーリーはちゃんと話を聞いて理解してくれるので、いつも有意義な会話になったものです。


 しかし、彼の後を継いだ今のレースディレクターはまったく違います。あまり自主性を持ってこのスポーツをもっと良くしていこうという姿勢が見られません。とても残念ですし、F1の将来にとって不安です。

■最終戦アブダビGPに向けて

 ブラジルGPでポイントを獲れなかったのは痛かったです。先に書いたようにアブダビGPの方がウチのクルマにはきついとは思いますが、最後の最後までポイントを獲りにいくしかありません。


 コンストラクターズ選手権ではもうアルファロメオには追いつけませんが、最後まで2台揃ってポイントを獲得するのが目標です。とにかく最後まで全力を尽くします。


 また来年に向けて、アブダビに新しいパーツを持っていって、金曜日にテストをします。アメリカでのテストでは、想定していたものとは違う結果が出たので、もう一歩違うやり方を試します。最後まで開発が止まることはありません。


■質問募集のおしらせ
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム】では、今年のオフシーズンに質問コーナーを実施します。レースに関係すること、ファクトリーでの仕事、またレースに関係ないことでもかまいません。小松エンジニアに聞いてみたいことがあれば、ぜひご応募ください。


 質問を採用された方のなかから抽選で数名の方に、小松エンジニアからご提供いただいたスペシャルプレゼントをご用意しております。


 質問コーナーの詳細は下記を参照。


・質問募集時期:11月28日(木)〜12月12日(木)
・宛先:info@as-web.jp (オートスポーツweb編集部宛)
    メールのタイトルを『小松コラム質問コーナー』としてお送りください。
・メール記入事項:質問者の名前(PN可)、質問事項(プレゼント希望者は郵便番号、住所、氏名、電話番号をお忘れなく)


※プレゼントの当選発表は、発送をもってかえさせていただきます。なお当選者の方々には、プレゼントのSNSへの掲載を控えていただくようお願い致します。



(Ayao Komatsu)




レース

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5位アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チーム33
6位ビザ・キャッシュアップRB F1チーム7
7位マネーグラム・ハースF1チーム4
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9位ステークF1チーム・キック・ザウバー0
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