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【小松礼雄のF1本音コラム】ダンプコンディションを読み切った会心の選択&最高に楽しかった日本GP鈴鹿の予選

2018年10月19日

 現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回はF1第17戦日本GPをふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。

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 第16戦ロシアGPではケビン(マグヌッセン)が8位入賞を記録し、迎えた日本GP。鈴鹿はウチのクルマに合うと思っていましたが、FP1の走り出しから想像していたとおり感触は良かったです。ソフトとスーパーソフトのタイヤ両方で安定して走ることが出来、ロマン(グロージャン)はフォース・インディアの(エステバン)オコンから0.223秒落ちの8位という想定通りの結果でセッションを終えました。

 FP2では、すべてのタイヤを走らせましたが、気になっていたのは予選用のタイヤ、スーパーソフトでのロングランです。金曜のこの時点ではまずまずの感触だったのですが、心配だったのは日曜に晴れて路面温度が10℃以上高くなった時にどうなるのか、ということです。

 40℃を超えるような路面温度ではスーパーソフトで長く安定して走ることは難しいだろうと考えていたので、できればQ2をソフトで通過したいと考えていました。幸いクルマに一発の速さがあることは分かっていたので、金曜夜のミーティングで、Q1はスーパーソフトで2回、Q2はソフトで2回、Q3はスーパーソフトで2回アタックをするという基本戦略を立てました。

 土曜になると、高速コーナーが続くセクター1に対して追い風となる方向でかなり強い風が吹いてきました。場合によっては突風が吹いてくるような状況で、その影響でコーナーごとにクルマのバランスが変化して1周をまとめるのが難しくなりました。結果、ケビン・ロマンは10番手、11番手と金曜に比べて明らかに遅くなってしまいました。

 しかし原因は明らかだったので、予選では空力のセッティングを大きく変更することにしました。普通はFP3を終えた段階で大きな変更をするのは良くないのですが、FP3のクルマがあまり良くなかったので、思い切って変更することにしました。鈴鹿は追い抜きが難しいので、セットアップは予選重視で行きたかったんです。

 Q1は天候が不安定だったために早めにアタックして、赤旗もありましたが無事、2台とも予定どおりに通過。Q2を迎える段階ではセッション中に雨が降る確率が高かったので、ドライで走れるのは最初のラン1回しかない可能性が大きいのは予測できました。

 この様な状況では、1回しかないかもしれないチャンスでソフトを履くのはリスクが高いので、安全にスーパースーパーソフトで行こうかどうか悩みました。しかし、結局はそれまでのクルマとドライバーの成績を考えて、当初の予定どおりにソフトで行くことにしました。

 そこでロマンは素晴らしいアタックを決めてくれて、スーパーソフトを履いた7番手の(セルジオ)ペレスから0.111秒落ちの8番手タイムを出しました。一方のケビンはセクター1でガスリーに引っかかってしまい、ロマンのコンマ5秒落ちの12番手に留まってしまいました。

 雨が降る前にもう一度走ってタイムを更新出来なければQ2落ちになってしまうので、急いでスーパーソフトで送り出しましたが、雨脚が強まり、タイムを出せず、そのままQ2敗退となってしまいました。ロマンは誰もタイムをその後更新することができなかったので、見事ソフトでQ2を突破、こちらは狙い通りの結果となりました。逆にトップ3チームでQ2をソフトで走ったのがメルセデスのみだったのにはちょっと驚きました。

 そして最後の勝負のQ3。雨足は弱まったものの、Q2終了後も雨は降り続けていました。それでも、この程度の雨足なら風が相変わらず強かったですし、結構路面は乾いていたのでドライで行ける可能性が高いんじゃないかと考えました。

 とは言っても、Q3開始直後はまだ路面があまり良くないはずです。その場合は待てるだけ待ってからドライで行くのが一番いい。しかし、雨雲レーダーはかなりの雨が直ぐそこまで迫っていることを示していました。

 予測ではその雨がサーキットの上にくるのはセッション開始4、5分後。ということはアタックをかけるベストのタイミングはセッション開始2、3分後。しかし、天気はなんと言っても予報ですから、それをどこまでギリギリに攻めるかというのは難しい判断です。

 幸いフェラーリ勢がセッション開始前からピットレーンにクルマを出して、セッション開始と同時にコースインしたので路面状態を直ぐに映像で確認することができました。それを見て、セクター1がこの時点であれだけ乾いているなら、ほぼ直ぐにドライで行って大丈夫と思ったので、自信を持ってロマンを送り出しました。

 当初はアタック2回分の燃料を積む予定でしたが、土壇場で1発勝負と踏んで、アタック1回分の燃料に変更しました。しかも1回目のアタックをした中ではロマンが最後だったので、路面が最も良いタイミングでアタックできました。

 スプーン出口の縁石がまだ濡れており、それに乗りすぎてタイムをロスしたものの、ロマンは5番手タイムを出してくれました。タイヤ選択、アタックのタイミング、燃料搭載量などチームクルーの作業がすべてうまくいった、まさに会心の予選でした。僕がF1で働いてもう15年になりますけど、こんなに楽しかった予選は久しぶりです。こんな時はこの世界で仕事ができて、ほんとに幸せだなと思います。

 決勝ではロマンが7位を長いこと走行していましたが、残念ながらバーチャルセーフティカー(VSC)解除直後にペレスにかわされて8位に終わりました。ロマンがレース後に「ペレスはレギュレーション違反ではないか?」と発言していましたが、それは彼の勘違いです。

 バーチャルセーフティカーが出ている時は安全のため、規定タイムより常に遅く走らなければいけません。ロマンは大体規定タイムより1秒遅く走っていたのでが、後ろにいたペレスはある時は規定タイムより3秒以上遅く走っていました。「VSCエンディング」のメッセージが出た時点でペレスはロマンより3秒ほど後ろにいたのですが、その後彼はほど規定タイムギリギリまでスピードアップして来たのでVSCが実際に解除された時はロマンのコンマ5秒後ろまで迫ってきていたのです。

 これでロマンは「自分はずっと規定タイムで走っているのに、突然差を詰められるわけは無い」と考え、ペレスは規定タイムより速く走ったに違いないと思い込んだわけです。しかし実際はペレスは常に規定タイムより遅く走っていたので何の違反もしていないんです。残念ながらペレスの方が一枚上手だったわけです。

 ロマンはVSC解除後のヘアピンの入口で一度、ペレスに抜かされかけたのですが、そこは何とか抑えました。しかし、その後のシケインでかわされてしまいました。もしかしたら、ロマンが抜かれた映像を見ていて、なぜロマンはコースをいっぱいに使ってディフェンスしなかったのか? と疑問に思った人もいたかもしれません。

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