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【ニューマシン分析特集】マノーの風洞モデルが示唆する2017年のF1の姿

2017年2月17日

 いよいよ2017年F1新車発表ラッシュが始まる。テクニカルレギュレーションが大きく変わった今年のマシンはどういう姿になるのか。残念ながら今年参戦することができなかったマノーの風洞モデルから分析する。


 1月の終わりにメディアに取り上げられた「MRT06」の風洞モデルの写真は、新レギュレーションに基づく2017年のF1がどのようなものになるかを示唆する、たいへん興味深いものだった。


 マノーF1チームが破産状態に陥ったとき、彼らの2017年用マシンは、設計製造プロセスの最終段階に入っていた。実際、すでに2台分のモノコックシャシーが作られており、ファクトリーのそれぞれのサービスベイに置かれていたが、パーツはほとんど何も準備できていなかった。キャッシュフローが滞って、サプライヤーへの支払いができなかったからだ。


マノーF1 2017年型車の風洞モデル
マノーF1 2017年型車の風洞モデル

 このシャシー後部の形状は、マノーが2014〜16年のメルセデスのレイアウトと同様に、水冷インタークーラーを燃料タンクとエンジン前面の間に挟み込むような形で配置するつもりだったことを示している。また、サイドポッドにあった電子機器の一部を、この「隙間」に移設する意図もあったように見受けられる。その狙いは、サイドポッドを空力的に最も望ましい形状にまとめることにあったようだ。


 フロントウイングに後退角がつけられたのは、新しいレギュレーションの要求によるもので、それに伴い中央のニュートラルセクションの先端部も広角のV字型になっている。


 ワイドで薄いノーズは、このニュートラルセクションの先端よりも後方から始まる。昨年型のノーズが、ニュートラルセクションより前方まで伸びていたのとは対照的だ。


 2009年にニュートラルセクションが導入されて以来、ノーズ先端の相対的な位置をどうするべきかは、チームにとって大きな関心事のひとつだった。ノーズそのものの形状と、このセクションとの間隔によって、ニュートラルセクション付近の空気の流れが変わり、ダウンフォースの発生や下流の空力効率の改善に利用できるからだ。


 フロントウイングの最大幅が広くなり、タイヤサイズも変わったことから、フロントウイングの形状には多くの変更点がある。


 ウイング外端部のいわゆる「アウトウォッシュトンネル」はよりアグレッシブな形状になり、その効果を高めるために数多くのエレメントが重ねられている。オープンエンドの3エレメントカスケードよりもやや内寄りには、外向きの「r」字型のターニングベーンが立つ。また、フラップの裏面のカーブは、いずれもその下にあるエレメントの形状に合わせてある。


 こうしたデザインは、2014年にウイリアムズFW36やケータハムCT05が採用したものとよく似ている。主な狙いは、ワイドになったフロントタイヤ前面に当たる気流をうまく分割して、後方へ流すことにあるようだ。


 後端が外向きにカーブしたエンドプレートには、後端を跳ね上げたカナードが備わる。これもまた、タイヤまわりの気流をコントロールして、タイヤの背後に発生する渦を整えることを目的としたものだ。


 フロントウイングのメインプレーンは2つの大きなエレメントからなり、アウトウォッシュトンネルの上にはいくつものスロットが追加された。もちろんアッパーフラップも新設計で、2つのエレメントのうち、下側の端部を上向きに曲げて結合させた形状になっている。


 このようにフロントウイングまわりのデザインは、この風洞モデルでも十分に複雑なものだが、さらに開発が進めば、一段と複雑さを増すことになったに違いない。

マノーF1 2017年型車デザイン
マノーF1 2017年型車デザイン


 2017年のレギュレーションではサイドポッドがやや大柄になり、空力的にはバージボードがこれまでよりも大きな役割を担うことになる。


 マノーの風洞モデルでは、バージボードがサイドポッドの前面に巻き付くような形で長く伸びており、その後端はフロアの隅につながる。一方、前端はシャシー下面のスプリッターのすぐ近くから始まって、効率を高めるためにいくつかのスリットが入っている。そして、このスリットで切り分けられた部分のうち、一番前のエレメントが直角に曲がり、水平なフィンとバージボードのサポートを兼ねるというデザインだ。


 車幅の拡大にともなって、サイドポッド幅の最小寸法も大きくなった。結果として、ラジエターやインタークーラーの配置を工夫する余地が生まれ、サイドポッド内の気流の効率を高めることができるだろう。


 サイドポッド前端部には、昨年型と同様の整流板が設けられている。これはコクピットの側面から始まって、ステーを兼ねたボルテックスジェネレーターでサイドポッドにマウントされ、サイドポッドのショルダー部分に沿ってカーブした後、フロアの数インチ上で終わる。全体としては、2005〜08年頃によく使われた空力付加物に似たものだが、昨年のトレンドと比べると、整流板とサイドポッド表面の間隔が明らかに広がっている。


 サイドポッドはコクピット横のあたりで最大幅に達した後、内部に収めたコンポーネントの許す限りにおいて、冷却気のアウトレットに向けて急激に絞り込まれる。アンダーカットを大きくして、フロアを露出させるため、ラジエターなどを通った空気の排出口はかなり高めの位置にある。


 リヤタイヤ前方のデッキには、2つのL字型の大きなカットアウトがある。これは空気をタイヤの側面に導いて、ディフューザーの方へ向かう気流を形成するもので、昨年まではレギュレーションによりリヤホイール中心線より後ろになければならなかったが、今年はその線から175mm前方まで許容される。


 マシン後部では、「シャークフィン」とも呼ばれるエンジンカウルの背びれが復活していることも、注目に値する。


 リヤウイングのエンドプレートは、前後長が短く、スラント(後傾)した形状になる。ウイングアッセンブリーが昨年より低くなるため、ボディ上流で発生する乱れた気流の影響を受けやすくなる可能性があり、エンドプレートの働きは一段と重要になるだろう。


 その形状は変わっても、低くワイドになったリヤウイングの効率を高めるべく、エンドプレートに様々なスロットが設けられることに変わりはないようだ。昨年、翼端で発生する渦を軽減を目指してトロロッソが先鞭をつけた、前方が開放されたルーバー状のスロットも取り入れられている。


 財政的に厳しい状況に陥った1月初めの時点で、マノーは新車の製作が困難になる可能性を見越して、2016年のマシンに必要な改造を施した暫定仕様の「MRT05B」でシーズンを迎える準備を始めていた。


 これは2017年のレギュレーションに合わせて、フロントノーズ下面とウイングピラー、シャシー下面のスプリッターとプランクの取り付け、バージボード、サイドポッド上面のカバー、フロアとリヤウイング、ディフューザーなどを作り直したものだったと言われている。


 マノーが計画していた新車は、注目すべきディテールが満載されたマシンではなかったかもしれない。だが、その風洞モデルの写真は、2017年の空力開発がどれほど複雑で高度なものになりうるかを示している。



(Translation:Kenji Mizugaki)

この記事は国内独占契約により英 AUTOSPORT.com 提供の情報をもとに作成しています




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