立場を離れて、純粋なファンとしてF1を見てほしい

　レースを楽しむには、ドライバーとコース形状を、ごく自然に把握できることが大前提だ。その上で、繰り広げられる“スポーツ”を映像として提供するために、テレビ画面上の情報は的確にポイントを突いたものを厳選してほしい。とりわけ、複数のマシンが接近した場合には、タイヤの使用状況がソフト〜ミディアム〜ソフトだとか、2台の間隔やラップタイムの変遷が云々……というよりも、現時点で履いているタイヤとその履歴だけで十分なことだってある。視聴者はデータよりもコース上で起こっている“目の前の事実”に注目しているのだから、たくさんの情報を掲げるよりも、マシンの動きから目を離さず認識できる量に情報を絞ることも大切だ──バックアップとして、スマートフォンやパソコンで得られるデータもあるのだから。

　F1の人気を取り戻そうと試行錯誤するよりも、ストラテジーグループやF1委員会という場で発言権を持っている人たちには、レース後に自宅に戻って一息ついたところで、自らのチームや立場を中心に回っていたグランプリの週末を忘れて、ワインを片手にテレビ映像だけでレースを観戦してもらいたい。当事者ではなく、家族と一緒に純粋なファンとして、どういうふうにF1が、みんなのもとに届いているか把握してもらいたいと思う。

「ファンの意見に耳を傾ける」という姿勢は、政治的な権力を持ち合わせず、もともとファンと意見を同じくするドライバーたちが主張する手段として許されるもの。ストラテジーグループが本当に“ストラテジー”のプロなら、彼らの仕事は、ファン＝ユーザーが求めるまえに、求められるものを察知して提供することにある。レギュレーションを変更しなくとも、資金を使わなくとも、改善できるディテールは、たくさんあるはずだ。

XPB Images

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