つまり、アロンソにはアタックしないという選択肢もあった。だが、マクラーレン・ホンダはアロンソを送り出した。それは鈴鹿に詰めかけたファンのためだけでなく、自分が予選に参加することでチームメイトのバンドーンに有利な状況を作り出す可能性があったからだった。
もしバンドーンに、自力でトップ3チームの直後の7番手のポジションを獲得することができる速さがあれば、アロンソにはほとんどやるべき仕事は残っていなかっただろう。だが、この日のバンドーンは10番手に入ることができるかどうかの速さしかなかった。
10番手だと、Q2のベストタイムを記録したときに装着していたタイヤでスタートしなければならない。バンドーンはQ2でスーパーソフトを履いていた。だが、鈴鹿はタイヤに厳しい。11番手以下のドライバーの中にはスーパーソフトより硬めのソフトを履いてくるドライバーもいるだろう。そうなると、スーパーソフトで10番手からスタートするのが、必ずしも得策ではなくなってくるのだ。
そこでチームはアロンソを走らせることで、ライバルからトップ10の座を1つでも多く奪うとともに、場合によってはバンドーンが11番手になる確率を高めたのだ。
「レースでは新しいタイヤでスタートできるから、Q3に進めなかったことはそれほど悪い結果ではない」
アロンソのQ3進出は、バンドーンにとって、新品のタイヤでスタートできるという予選11位を獲得した以外のアドバンテージもあった。それは前方にいるアロンソが35番手降格のペナルティを受け、自動的にスタートポジションが上がることだ。この日は、予選6位のライコネンもギヤボックス交換のために5番手降格するため、バンドーンは労せずして9番手に繰り上がった。
「この位置からなら、十分にポイントは狙えます。もちろん、最後尾スタートとなるフェルナンドがポイントを取ることも諦めてはいません」
過去2年間、日本GPで入賞できていないホンダ。F1復帰後、初ポイントを賭けた戦いを期待したい。
(Masahiro Owari)