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【F1新車分析】マクラーレンMCL33:速いが脆い…空力効率を重視しすぎて冷却にトラブル

2018年3月16日

 F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。今季からルノー製PUにスイッチしたマクラーレンMCL33をチェック。


(1)ルノーV6とのマッチング
 パワーユニットに関する技術レギュレーションは、各ユニットのサイズやシャシーへの取り付け位置などを厳しく規制している。とはいえメーカーによって、構造やレイアウトはかなり違っている。なので去年までのホンダからルノーへの変更が、マクラーレンにとって決して簡単な作業でなかったことは容易に想像できる。

F1新車分析:マクラーレンMCL33

 テクニカル・ディレクターのティム・ゴスは、その困難さをこう説明している。
「F1のパワーユニットには、2グループが存在する。コンプレッサーをエンジンの前、ターボを後ろに置き、MGU-HはVバンク内部に収めるメルセデスとホンダ。そしてターボとコンプレッサーは共にエンジン後部で、MGU-HはVバンク内部というフェラーリ、ルノーグループだ」


「ホンダからルノーへの変更が、大きな負担になることは最初から覚悟していた。ルノーにしたことのメリットは、エンジン本体を前方に移動できたことだ。一方でコンプレッサーが後ろに来たことで、エキゾーストを前方に持っていかなければならなかった。全体パッケージは、そのままにね」


「そのためシャシー後部は、すべて設計を見直したよ。ギヤボックスのケーシング、リヤサスペンション、冷却システム、すべてだ。とはいえパワーユニット変更はずいぶん前から予想されていたので、ある程度の準備はしていた。実際の作業は、2週間ほど集中して行って完了した」


(2)冷却にさまざまな工夫

F1新車分析:マクラーレンMCL33
F1新車分析:マクラーレンMCL33


F1新車分析:マクラーレンMCL33
F1新車分析:マクラーレンMCL33

 MCL33のサイドポッド開口部は、前年型より明らかに小さい。一方で去年のフェラーリが先鞭を付け、今季レッドブルやウイリアムズ、ハースが追随したサイドポッドを高くする手法は採っていない。とはいえ開口部自体はレッドブルのそれと同じくらいコンパクトになっており、マクラーレンの冷却システムの効率化はいっそう進化していると考えていいだろう。


(訳注:この記事は新車発表時のもので、バルセロナテストで冷却トラブルに見舞われる前だった。後述するエアインテークもそうだが、空力効率を重視するあまり、マクラーレンが冷却を攻め過ぎていたことがよくわかる。)


 驚くべきは、ドライバー背後のエアインテーク下にあった二つの細長い穴が消えていることだ(黒矢印)。ハロの導入で乱流が増える分、できるだけ開口部を減らそうと思ったのだろう。


 サイドポンツーン上部には、2列に並んだミニウイングが付いている(白矢印)。前輪が巻き起こす乱流を遠ざけると同時に、車体からの気流を防ぐ目的と思われる。

F1新車分析:マクラーレンMCL33
F1新車分析:マクラーレンMCL33


(3)規制の抜け穴を見つけた?
 マシン前部には、大きな変更は見られない。特にフロントサスペンションのジオメトリーが変わっていないのには、大いに驚いた。というのもFIAは昨シーズン、マクラーレンを含むいくつかのチームに対し、「トラックロッドに車高を一定にする役割を負わせている」という疑いを抱いていた。具体的にはコーナー手前でのブレーキングを終えた直後に、ノーズとフロントウイングが浮き上がり、ダウンフォースが抜けるのを防いでいたというのだ。


 それを受けてマクラーレンはオーストリアGP以降、アーム取り付け位置を高くするなどの解決法で切り抜けた。12月にはFIAがサスペンションと操舵系に関して、より厳しいディレクティブ(技術指示書)を送付。にもかかわらず昨年型のサスペンションを継続しているところを見ると、マクラーレンの技術陣はレギュレーションの枠内での解決法を見つけたようである。


(4)『V』から『Y』へ
 一方リヤサスペンションは、まったくの新設計だ。通常サスアームはV字型をしている。ところがMCL33の場合、ホイールに届くかなり前の位置で2本のアームが一体化し、「Y字型」になっている。昨年のメルセデスとトロロッソにも同様のアイデアは見られたが、ロワーアームであり、形状も異なっている。アームを一本化したことによる空力効果は、決して少なくないはずだ。


(5)全チーム中最長のスリット
 フロア両脇の長いスリットは、昨年の1本から2本になった。レッドブルやフェラーリにも見られる切れ込みだが、彼らのは1本で、長さもずっと短い。


 その役割は、主に二つが考えられる。まずフロア下により多くの空気を取り込むことで流速がいっそう増し、ダウンフォース増大が期待できること。そしてもうひとつはここから空気をマシンリヤに流すことで、ディフューザーの効率を上げることだ。


(6)リヤにもさまざまな変更が
 ディフューザー自体も、去年型に比べ切れ込みが深くなっているなど、形状変更されている。インパクトストラクチャー上のミニウイングも、数が倍増した。さらに注意深い観察者なら、リヤウイングピラーに付いた突起にも気づいたことだろう(青矢印)。今後取り付けられる予定のミニTウイング用のアンカーであろう。 


(7)ライバルはレッドブル?
 今季のマクラーレンは、同じパワーユニットを積むレッドブルに対してどれほどの戦闘力を示せるか。それを最大の課題としてきたという。思えば両チームは、エンジニアの取り合いをしたり、モービルやTAGホイヤーなどの有力スポンサーがマクラーレンからレッドブルに移動したりと、決して良好な関係ではない。


「もしレッドブルを打ち負かせたら、最高だね」そう語るマクラーレンの空力責任者ピーター・プロドロモウも、レッドブルでエイドリアン・ニューウェイの右腕と言われた逸材だった。


「もちろん簡単な使命でないことは、承知している。とはいえ今季は、ルノーとレッドブルがわれわれと同じパワーユニットを使うわけで、この3チーム間の実力差がはっきり出ることになる。それもあってマクラーレンのスタッフ全員は、今までになく奮い立っているよ」



この記事は f1i.com 提供の情報をもとに作成しています



(Translation:Kunio Shibata)




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