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新連載:ライコネン観察日記・2016年、初テストの巻

2016年2月28日

 孤高のキャラクターで、ついつい目が行ってしまうキミ・ライコネン。大ベテランとなっても何を考えているのか、いないのか、なかなかつかめない。そんな彼の「番記者」であるフィンランド人ジャーナリストのヘイキ・クルタ氏が見た、ライコネンの姿を綴ります。第1回は、2016年シーズン最初のバルセロナ合同テストの現場から。

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「走れないし、おなかも空いたし」

 その日は何ひとつうまく行かないように思えた。ライコネンが初めてフェラーリの新車SF16-Hをテストした日のことだ。

 バーガンディ・レッドのクライスラー・ジープに乗って朝早くからサーキットにやって来たキミは、とても晴れやかな表情で、またレーシングカーを走らせるのが楽しみで仕方がないように見えた。そこにいたのは昨年と何ら変わることなく、真のチームプレイヤーとしてフェラーリのスタッフに認められたキミ・ライコネンだった。

 ところが、まず彼を迎えたのは悪い知らせだった。まもなく午前9時のコースオープンというところで、彼はチームから「しばらく待ってもらわなければならない」と告げられたのだ。マシンの燃料系に異常が見つかり、いったん分解して修理する必要が生じたのである。

 結局ライコネンは3時間10分という長い待ち時間をパドックで過ごすことになる。長年キミを見てきた私は「またか」と思わざるをえなかった。彼の場合、必ず幸運よりも先に不運がやってくる。前日にはチームメイトのセバスチャン・ベッテルが万事順調な1日を送り、126周も走り込んでいたのに、キミはガレージを出ることさえ叶わなかったのだ。正午を少しすぎたころ、ようやくマシンの準備が整い、ライコネンはとりあえず新車の感触をつかむために4周のインスタレーションラップを行うことができた。

 走りたいという欲求が満たされず飢餓感を抱えていたキミは、実際にお腹を空かせていた。ランチタイムに魚の切り身の料理を注文したが、テーブルに届くまでには思ったより時間がかかった。キミはため息を漏らしながら天を仰ぐ。マシンがお預けになった上に、ランチまでお預けとは……。

 だが、待ちに待った魚料理は美味しかったし、午後にはドライビングへの飢餓感も満たされた。その日の走行を終えるまでに、ライコネンは前日にベッテルが刻んだ周回数より9周も多く走ることさえできたのだ。

(c)LAT


 午後6時すぎから始まるフェラーリの記者会見は、いささか退屈なものになるだろうと私は思っていた。午前のセッションを、ほぼそっくり失ってフラストレーションを感じているキミの愚痴を聞かされるだけと予想していたからだ。しかし、ムードは午前中から一変していた。フェラーリの狭いプレスルームに40人近いメディア関係者が詰めかけ、キミは予定より2、3分遅れてきたが、表情やジェスチャーに不満やイラ立ちは一切読み取れなかった。

「理想的な滑り出しではなかったけど、最終的にはまずまずと言える周回数をこなすことができた。新車からも、いいフィーリングが得られた。昨年のクルマより良くなっていることは間違いない」と、拳で左目をこすりながら、ぼそぼそと話すライコネンは、私には見慣れたメディアの前に出たときの「眠そうな男」だった。

(c)Sutton


 またキミは、新車の評価をするのは時期尚早であり、新しいプッシュロッド式フロントサスペンションについても、まだ何とも言えないと語っている。実際この日の午後を通じて基本的なセットアップは何も変えていない。キミと新しい相棒にとって、シェイクダウンのようなものでしかなかったのだ。

 それでも午後の走行は充実したものだったようだ。喜色満面というほどではないものの、彼は確かな手応えを感じていたし、担当のエンジニアやメカニックたちも満足気に見えた。

 総じて言えば、テスト初日はライコネンにとって、最初に失ったものよりも、あとから得たもののほうが大きい一日だった。長時間のデブリーフィングを終えたあと、キミはパートナーのミントゥや息子のロビンと電話で話をしていた。すぐそばで聞き耳をたてていたわけではないが「まあまあの一日だったよ」とでも言っていたに違いない。

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 今回はテスト初日の「ライコネン観察日記」を、お送りしました。これから、もっとプライベートな内容が入ってくるのか、こないのか。第2回からは、F1速報webのプレミアム会員限定のコンテンツとして、お送りする予定です。お楽しみに。

(Text : Heikki Kulta / Translation:Kenji Mizugaki)




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