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【F速プレミアム】【F1コラム】マクラーレン3位奪取の鍵はサインツのノリスのコンビネーション

1月5日

 2020年F1最終戦は、カルロス・サインツJr.にとって、マクラーレンでの最後の週末だった。そのため、どちらかというとサインツの方に注目が集まったが、ノリスも見事な仕事をして、存在感をアピールした。

 シーズン終盤に向けて、マクラーレンの運勢は大きく変動した。トルコの後は、コンストラクターズ選手権3位のレーシングポイントと5点差の4位だった。ルノーを加えた3チームのなかで最速のマシンを持っていたのはレーシングポイントであり、マクラーレンが彼らに勝ってランキング3位を獲得するのは難しいように思われた。

 しかしバーレーン1戦目でまたもや状況が変わった。予選においてノリスは最終ラップでミスをしてしまい、6番手以内に入る可能性があったにもかかわらず9番手グリッドにとどまった。しかし、彼は困難なレースのなかで素早く挽回を図った。ロマン・グロージャンの衝撃的なクラッシュの影響でレースが約1時間中断した後、2回目のリスタートでノリスはトップ5に浮上。ランス・ストロールは早々にリタイアし、3番手を走行していたセルジオ・ペレスが終盤にMGU-Kの故障に見舞われたことで、ノリスは4位、サインツは5位を獲得した。

 レース終盤、ノリスは恐ろしい出来事を経験するなかで、その成熟度をしっかり示した。ペレスのマシンに近づこうとしていたマーシャルが、ノリスの目の前でコース上を横切った。ノリスは、照明に反射した消火器が見えたために、なんとかマーシャルを避けることができたという。

 それは非常に恐ろしい瞬間であり、起こってはならないことだった。しかしノリスは動揺しすぎることなく、懸念を無線で報告したのみで、冷静に対応した。

 マクラーレンはコンストラクターズランキングで大きな一歩を踏み出し、残り2レースの段階で3位に浮上、レーシングポイントを17ポイント差でリードした。

 2020年は非常に奇妙な年だったが、1週間後のサクヒールGPはさらに異例の状況となった。ルイス・ハミルトンがCOVID-19の影響で欠場することになったため、メルセデスはジョージ・ラッセルを招集したのだ。ハミルトンのライバルたちにとって好結果を得る可能性が高まったように思えたが、ノリスはラッセルの活躍を予想していた。

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「彼はポールを獲得することができるだろう。優勝を達成することも可能だと思うよ」とノリス。

「メルセデスのライバルたちに対するアドバンテージが比較的小さい週末があるとすれば、おそらくここだろうと思う。つまり、他へのアドバンテージという点では、一年で一番厳しい週末のひとつに、彼はメルセデスで走ることになる」

「だから、簡単なことではないと思うけど、彼がどれだけ良いドライバーかは知っているし、他のみんなもそうだと思う。もちろんメルセデスもそうだろう。彼はすごい結果を出すんじゃないかな。もちろん、例えば優勝したら、彼に少しだけ嫉妬するかもしれない。それでもうれしいのは間違いないよ。また彼と戦えるのを楽しみにしている」

 ノリスとラッセルは親友であり、2018年のFIA-F2選手権で戦った仲だ。その年にはラッセルがタイトルを獲得し、ノリスは2位だった。

 ラッセルは僅差でポールポジションを逃したものの、レースでは優勝に向けてトップを快走した。ところがピットストップでのトラブルとパンクという衝撃的な出来事によって、勝機を失った。

 ノリスは残念ながら、ラッセル後退のチャンスを生かすことはできなかった。予選ではQ2でマクラーレンが誤ったタイミングでコースに送り出したため、ノリスはQ3に進出することができなかった。そのため、チームはパワーユニットを交換、ノリスは19番グリッドからのスタートとなった。見事なスタートを決めたノリスは10番手を走行、より上位を狙えるかに思えたが、バッテリーの問題で後退、終盤にはラッセルに抜かれて10位でレースを終えた。

 マクラーレンにとってさらに悪いことに、メルセデスの失敗によりペレスが優勝し、ストロールが3位表彰台を獲得。レーシングポイントはランキング3位に浮上、マクラーレンは10点差の4位に落ちる結果になった。

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 アブダビはサインツにとってマクラーレンでの最後のレースだったため、ノリスは週末を通してメディアからチームメイトについてのコメントを求められ続けたが、もちろん自分のレースへの集中を失ってはいなかった。ノリスは新しいパワーユニットをフルに活用して予選4番手を獲得。ポールポジションからわずか0.25秒差のタイムを出したことに、自分でも驚いていた。

 一方のサインツは6番グリッドにつけ、ライバルのペレスはパワーユニット交換のペナルティを受けて、後方からのスタートとなった。つまり、選手権3位争いの行方が再び予測できなくなってきたのだ。

 そんななか、レーシングポイント勢はペレスがリタイア、ストロールが10位という、彼らにとっては悲惨な結果でレースを終えた。一方、ノリスとサインツが5位、6位の好走を見せたおかげで、マクラーレンはコンストラクターズ選手権3位を奪取した。チームにとって、2012年以来のベストリザルトだ。

 鍵となったのは、ドライバーふたりのコンビネーションの良さだったといえるだろう。ふたりの間にはドラマや争いはなく、しかも彼らはほぼ互角の力を持っていた。サインツはフェラーリに選ばれるほどのドライバーだ。ノリスは常にそのサインツに匹敵するパフォーマンスを見せ、ドライバーズ選手権ではわずか8ポイント差の結果を出した。彼の功績は非常に大きい。

 レーシングポイントのドライバーふたりのポイント差は50ポイント、ルノーのふたりの差は57ポイントだった。それを考えると、マクラーレンのペアがいかに優れていたかは明らかであり、このふたりだからこそ、チームが成功することができたと言っていい。

 2021年にフェラーリドライバーになるサインツと同様に、ノリスの2020年のパフォーマンスも高く評価された。彼はAutosport賞におけるファン投票によるブリティッシュ・コンペティション・ドライバー・オブ・ザ・イヤーに、ラッセルを破って選ばれた。

 ノリスの未来は明るい。2021年にチームに加入するダニエル・リカルドから、さらに多くのことを学ぶだろう。彼はすでに高いレベルに達しているが、より一層の成長が見られるだろう今後が楽しみだ。

(Chris Medland)