【】レッドブル・ホンダ分析:運も味方に、ふたつの懸念を払拭。正しい戦略で主導権を握ったフェルスタッペン
8月10日
レース前、マックス・フェルスタッペンの心のなかには、ふたつの懸念があった。
ひとつは、スタート直後の1周目の状況。もうひとつは、セーフティカーだ。
その理由は、トップ10内からスタートするドライバーのなかで、フェルスタッペンだけがハードタイヤを装着し、ほかのライバルたちはミディアムタイヤでスタートするからだ。
「レース全体を考えれば、ハードのほうがメリットは大きいけど、スタート時の蹴り出しという点ではミディアムに劣るからね」(フェルスタッペン)
つまり、せっかくハードを履いても、スタートでミディアム勢に前に出られると、作戦がうまく機能しない可能性がある。後ろからスタートするミディアム勢だけではない。予選3番手のニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)もスタート直後にかわしておかないと、メルセデス勢に逃げられてしまう。スタート直後の1周目の状況というのは、1周目のコントロールラインを3番手で通過するという意味だった。
果たして、フェルスタッペンは見事にそれを実行する。スタート直後の1コーナーで早々に3番手に浮上。ロングランで安定するハードタイヤで、ミディアムタイヤを履くメルセデス勢にプレッシャーを与えるという展開に持ち込むことができた。
予想通り、5周目からメルセデス勢のペースは落ち始め、約4秒あったトップとの差は、2秒台まで縮まる。そして、13周目にトップのバルテリ・ボッタス(メルセデス)がピットイン。翌14周目には代わってトップに立っていたルイス・ハミルトン(メルセデス)もピットインし、フェルスタッペンは労せずして先頭に立つ。
先頭に出たフェルスタッペンはタイヤを労わりながらも、自分のペースで走行。2番手のボッタスとの差は18秒まで広がった26周目にピットインする。シルバーストンのピットストップロスタイムは約21秒なので、ピットストップを遅らせることで逆転を狙うオーバーカットするには若干足りなかったが、フェルスタッペン自身のペースも落ち始めていたため、正しい戦略だった。
ミディアムに履き替えたフェルスタッペンは、ピットアウトしたときにはボッタスにわずかの差で前に出られたが、ニュータイヤを履いたフェルスタッペンは、すでに12周走行したハードタイヤを履くボッタスをピットアウト直後に難なくオーバーテイク。これでレースの主導権を握った。
さらにフェルスタッペンとレッドブル・ホンダは、ボッタスと同じタイミングとなった2度目のピットストップでもミスなく、ポジションをキープ。もう1セット新品の状態で残していたハードタイヤで逃げ切る作戦に出た。
こうなると、怖いのは、もうひとつの懸念材料だったセーフティーカーだった。というのも、このとき先頭を走っていたのは2回目のピットストップを送らせていたハミルトンだったからだ。もし、このタイミングでセーフティーカーが導入されると、ハミルトンがそのままトップでコースに復帰する可能性があったからだ。
しかし、この日のフェルスタッペンには運も味方。セーフティーカーは最後まで出動せず、2番手のハミルトンに11秒、3番手のボッタスには19秒という大差をつけて、トップでチェッカーフラッグを受けた。
「予選のQ2でハードタイヤを履くという決断をした僕たちの戦略が正しかったことを証明できてうれしい」(フェルスタッペン)
パートナーを組んで初めて臨んだ2019年のレッドブル・ホンダの初優勝は開幕から3カ月以上が経過した9戦目だった。今年は開幕から1カ月後の5戦目。メルセデスの背中は、まだ見失ってはいない。
(Masahiro Owari)
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