ロマン・グロージャン(ハース)

【】ハースF1残留が決まったグロージャン「このまま続けるべきか真剣に悩んだ」と明かす/F1シンガポールGPインタビュー

9月20日

 ニコ・ヒュルケンベルグ移籍という大方の予想に反し、ロマン・グロージャンのハース残留が決まった。ギュンター・シュタイナー代表は、「2019年シーズンの不振はドライバーより、マシンパッケージにあった」として、「ドライバーたちに責任はない。新たな要素が入るより、今の態勢の継続を最優先した」ことを最大の理由として挙げた。

 それに対しグロージャン自身は残留決定を素直に喜び、一方で「引退についてかなり真剣に考えた」と、複雑な胸中を明らかにした。

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──シーズンを通じて、「契約延長を疑ったことはない」と言い続けていました。結局は、あなたが正しかったですね。

ロマン・グロージャン(以下、グロージャン):でしょう? とはいえ、2020年もまたここにいる仲間と一緒に戦えるのが本当にうれしいよ。たしかに今季は2018年に比べると、期待したような結果が出せていない。でも技術的なフィードバックとかで、十分貢献してきた自負はあったからね。来季はより良い結果が出ると信じているよ。

──シュタイナー代表は契約延長の決め手のひとつとして、「良好な人間関係」に言及していました。怒鳴り合ったこともあったけれど、それでお互いの関係が悪化したりすることはなかったということでしょうか。

グロージャン:それも大事だったと思うよ。F1に限らずどんなスポーツでも、真剣勝負のなかではあっという間にギスギスした雰囲気になってしまう。僕らも本気で言い合ったことは、何度もある。でもそれが尾を引くことは、決してなかったね。

──これで、来季は10年目のF1になります。ここまでのあなたのF1キャリアはどんなものでしたか。

グロージャン:いつもハッピーではなかったし、嵐の日々を過ごしたこともあった。でも素晴らしいクルマに恵まれたこともあったし、決して不幸なキャリアじゃないと思うよ。

 来年で10年、でもそれで終わりにしたくないし、中期的な計画も考え始めてるところさ。いずれにしても来季は、みんなが笑顔になるような結果を出したいね。

──ヒュルケンベルグとのシート争いでは、結局何が決め手になったのでしょう。スポンサーの持ち込み額の多寡とかも、あったのでしょうか。

グロージャン:実際のところ何が決め手になったのか、僕にはよくわからない。でもさっき話した技術フィードバックは、かなり大きな部分を占めたと思っている。あとはもちろんチームのみんなと一緒に戦った経験もそうだし、僕の個人スポンサーの貢献も大きかったと思う。(超高級時計メーカーの)リシャール・ミルをはじめとしてね。

──チームメイトと何度も同士打ちしたり、上層部に不満を投げかけたり、ミスを繰り返したり、少なからぬ悪いイメージがあなたには付きまとっている。そこは、不利な部分だとは思わなかったのですか?

グロージャン:どうだろう。確かにそれは事実だよ。でも僕にはそれ以上に、さっき言ったような良い部分がある。そこを評価してくれたんだと思う。僕だって、決してセーフティカーの後ろでスピンばかりしてたわけじゃない(苦笑)。超一流ドライバーだって、ミスは犯している。

 重要なのは自分のすべきことをしっかり認識して、それを遂行することさ。チームもその部分を最終的に評価してくれたんじゃないかな。F1ファンのなかにも、僕をずっとサポートしてくれる人たちもいれば、大嫌いだと公言する人たちもいる。それは仕方のないことだよ。

──チームから放出されるんじゃないかと、恐くなったことはありますか?

グロージャン:それはない。でも一方で僕自身が、このまま続けるべきかどうかを考えたことはあったね。かなり真剣に考えたよ。2011年以来、僕はタイトルを獲ってない。そして2013年以来、僕は勝てる可能性の勝てるクルマに恵まれてない。そんな状態で続ける意味があるのかと自問自答したね。

 そうやって考え続けて、やっぱり僕はF1を走りたいという結論に達した。たとえ勝てなくても、僕は幸せだと自覚したからね。

──シュタイナー代表は「来季に向けて、1日も早くチーム一丸となって体制を整えたかった。なのでドライバーラインナップも決定を急いだ」と言っていました。そのなかであなたは、どんな貢献ができると思っていますか。

グロージャン:来季のことが不確かな時も、僕はファクトリーのシミュレーターで来季のマシン開発に地道に取り組んでいた。残留が決まった今も、やることは同じだよ。今季のマシンで一番問題だったのは、シーズン中の車体アップデートがまったく機能しなかったことだ。その原因がどこにあったのか、まずはそこを徹底的に究明することが最優先だね。



(Kunio Shibata)