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【】【イギリスGPの焦点】スタートからゴールまで煌めきに満ちたグランプリ。ドライバーが自分たちで“戦う基準”を示した大きな意義

7月17日

 シルバーストンは雲ひとつない快晴だったのかと思い返すほど、スタートからゴールまで煌めきに満ちたグランプリだった。曇り空の下で輝きを放ったのはドライバーたちの才能。DRSに助けられただけではない、鮮やかなオーバーテイク。“取られたら取り返す”意地とテクニックによる反撃。満員の観客スタンドからは、何度、大きな歓声が上がっただろう?

 スタート直後、トップを争うメルセデスのふたりが熱いレースの流れを示した。ポールポジションから首位を固めようと逃げるバルテリ・ボッタスと、1周でも早く前に出ようと攻撃するルイス・ハミルトン。
「僕らが序盤からあんなに激しく戦うなんて、チームは予想していなかったと思う」と、ハミルトンは振り返った。チームだけではない。乱気流を嫌うメルセデスがあれほど接近して周回を重ねるなどとは、誰も想像していなかった。

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 ハミルトンが本気で仕掛けたのは4周目。0.3秒差でコントロールラインを通過した後、ウェリントンストレートでDRSを開き、チームメイトの真後ろに迫り、ターン6に向かって右のラインを取った。守るボッタスがブレーキを遅らせると、即座にラインをクロスさせて左側に並んだハミルトン。右に回り込むルフィールドでボッタスをかわして前に出た。スタンドは大歓声──しかし、ボッタスも引き下がりはしない。イン側のラインからハミルトンに並んで、旧ピットストレートに向かう。

「バルテリはイン側にいたけれど、コーナーを抜けるところで彼の姿を見失った。ミラーに映ってないし、真横にも見えないし、ちょうど死角に入るところにいたんだね。“そこにいるかもしれない彼”のため、僕はドアを閉めることができなかった」
 右にボッタス、左にハミルトン。並んで旧ピットストレートを駆け抜けた後、コプスでボッタスが首位を取り戻した。

「バルテリは素晴らしいドライビングをしていた。そこで僕は“いったん退くべき”と判断した。ピットストップまで待って、そこでアンダーカットなり何なり、方法を考えよう、と」

 メルセデスの計算では、ミディアム/ミディアム/ハードが最速の作戦。しかしレース序盤の段階ですでに、ハミルトンは「第1スティントを20周〜21周目まで引っ張り、第2スティントではハードを履こう」と決めていたと説明した。その時点で1ストップが可能だと確信していたわけではないけれど、第2スティントの走り始めのタイヤ履歴をできるだけボッタスと離すことによって、タイヤがフレッシュな間に攻撃が可能だと考えた。

 20周目のセーフティカー出動は、ハミルトンにとって理想のタイミング。16周目にミディアム→ミディアムの交換を終えていたボッタスは3番手。オーバーカットされないようチームメイトとの間隔をコントロールしつつ、慎重にタイヤ管理を行っていたが、セーフティカーがハミルトンにフリーピットを与えてしまった。

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 メルセデス2台のバトルが相手に十分すぎるほどのスペースを残したチームメイト同士の戦いであったのに対して、彼らの後方で繰り広げられたシャルル・ルクレール vs マックス・フェルスタッペンのバトルははるかに攻撃的なもの──「オーストリアGPの経験から、僕は“どこまで許されるのか”ということを学んだ」と、ルクレールは走行が始まる前にも宣言していた。