マクラーレンからトロロッソへ、そしてレッドブルとホンダF1の推進力、そして顔となっていた山本雅史部長。

【】ホンダの新人事で山本雅史部長がF1専任に。「国内や二輪でやりきった感はありませんが、F1に集中できる環境はうれしい」

2月21日

 ホンダのレース活動全般を牽引し、F1でもトロロッソ、そしてレッドブルとの提携の立役者である山本雅史モータースポーツ部長が、4月1日付で部長職を離れることが2月19日に明らかになった。ただし、山本部長はモータースポーツ部には残り、今後はF1活動に専念することになるという。

 普通に考えれば、降格とも取られかねない人事である。では実際には、どういうことなのか、F1ウインターテストが始まったばかりのスペイン、カタルーニャサーキットで山本部長を直撃すると、「『とにかくF1に専念しろ』と社長から言われました」と、八郷隆弘社長直々の指示だったことを明らかにした。

 2015年のF1復帰から今季で5シーズン目を迎えるホンダだが、いまだに表彰台にも上がれていない。半世紀以上のホンダF1の歴史の中でも、これほどの低迷は初めてのことだ。それが今季はトップ3の一角レッドブルと組み、優勝も十分に視野に入る。

 だとすればなおさら、今シーズンは失敗は許されない。そんな強い危機感を抱いた八郷社長以下のホンダ経営陣が、あえて部長職を解いてでも、山本氏にF1だけに業務を絞らせようと考えたようだ。

 一方でホンダのモータースポーツ部長の職は、二輪から四輪、F1まで、すべてのカテゴリーを網羅する激務である。山本部長は3年前の就任以来、スーパーGTやスーパーフォーミュラで実績を上げ、二輪、そしてF1活動にも深く関わってきた。その過程で山本部長自身「まだまだ、やるべきことはたくさんある」と思うと同時に「ひとりですべてを見るのは無理」とも感じていたともいう。

「国内レースや二輪に関われなくなるのは残念というか、やりきった感はまだありません。でもF1に集中できる環境を与えてもらったという意味では、うれしいです」。今回の人事を伝えられた際の相反する気持ちを、山本部長は正直に吐露してくれた。

 では、具体的に今後はF1にどう関わっていくのか。「まずは21戦すべてに帯同する」と山本部長。それはトロロッソやレッドブルの首脳陣にとっては、願ってもないことだろう。F1の世界はとにかく、同じ顔ぶれが長く付き合っていくことが重要だ。

 山本部長はF1にやって来た当初から、日本人らしからぬ率直な物言いとタフな交渉力で、すぐにこの世界の一員に認められた。それだけにできるだけ長く、そして深く関わることが、ひいてはチームに対するホンダへの信頼を高めることにもなる。

 新たな肩書きはまだ決まっていないということだが、今後はたとえば「ホンダF1プロジェクトリーダー」や「ホンダF1マネージング・ディレクター」というような、F1界の誰が聞いても職責が想像できる名前になりそうだ。

 いずれにしても今後のホンダF1は、レース現場の技術陣の統括は田辺豊治テクニカルディレクター、マネージメント部門は山本雅史氏とはっきりと顔の見える人材が据わることで、いよいよ頂点を目指す体制が整ったといえるだろう。

ホンダF1 モータースポーツ部 山本雅史部長
これまでホンダのモータースポーツ活動の顔となってさまざまな改革を行ってきた山本部長。国内ではSFで大シャッフルを行った直後だけに心残りも多いだろう。

2018スーパーフォーミュラ最終戦鈴鹿決勝
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(Kunio Shibata)